ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの”事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、WEB広告代理店とSNSマーケティングという、デジタルマーケティングの異なる専門領域を持つ企業同士の株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までのプロセスを、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。
ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に”何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。
この記事のおすすめ読者
- WEB広告事業の市場変化に直面し、次の成長戦略を模索している経営者の方
- M&Aによってデジタルマーケティングの提供領域を広げたい企業の経営層の方
- WEB広告とSNSマーケティングという異なる専門領域が、M&Aでどう統合されるかを知りたい方
ケース概要
本ケースは、WEB広告運用に豊富な実績とノウハウを持つ広告代理店と、ナショナルクライアントを中心にSNSマーケティング・ショート動画・インフルエンサーマーケティングを展開するSNS特化企業による株式譲渡の事例です。Googleアナリティクスの規制強化によって案件が減少し、WEB単体での効果が出しづらくなっていた売り手側と、SNSだけでは応えきれないWEB広告需要を取り込みたい買い手側——両社の課題が鏡合わせのように補完し合う形で、今回のM&Aは実現しました。
クライアント概要(架空・モデルケース)
譲渡企業(売り手)
- 株式会社A / 従業員約20名 / WEB広告代理店事業を運営。
- Google・Meta広告を中心に、多数のクライアントの広告運用を手がけてきた実績を持つ。
譲渡企業(売り手)課題感
- Googleアナリティクスの仕様変更・規制強化により、計測精度が低下し案件が減少傾向
- WEB広告単体では効果が出しづらくなり、SNSとの連動による施策設計を求める顧客が増えている
- SNSマーケティングのノウハウがなく、顧客の要望に応えられないまま失注するケースが出ている
譲受企業(買い手)
- 株式会社B / 従業員約100名 / SNSマーケティング事業を展開。
- ナショナルクライアントを中心に、SNS運用・ショート動画制作・インフルエンサーマーケティングを提供。
譲受企業(買い手)課題感
- SNSマーケティングの支援を行う中でWEB広告運用の依頼が増えているが、社内に知識・ノウハウがない
- SNSのみの提供にとどまり、WEBと連動した統合的なマーケティング支援ができていない
- WEB広告領域を内製化したいが、採用・育成では対応が追いつかない
取引形態
- 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)
ミライアの役割
- 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。
プロセスの全体像
ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで約7ヶ月のプロセスとなりました。
本件の特徴は、買い手側がすでに受けている顧客からのWEB広告需要に対して、売り手のノウハウがそのまま応えられるという、シナジーの即効性が高かった点です。株式会社BのSNSマーケティング顧客に対して、株式会社AのWEB広告運用ノウハウを横展開できる——その構想が、両社の対話を深め、プロセスを推進する原動力となりました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ
売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。
株式会社B(買い手)からの依頼
- 今回のプロセスは、買い手である株式会社B側からのご相談を起点に始まりました。
- ナショナルクライアントを中心にSNSマーケティング事業を展開してきた株式会社Bは、SNS施策の提供を進める中で、顧客からWEB広告運用の依頼が増加していました。「SNSはお願いしているが、Google広告やリスティングも一緒に見てほしい」——そうした声に応えられないまま、他社に流れてしまうケースが続いていました。WEB広告のノウハウを持つチームを取り込み、SNSとWEBを一体で提供できる体制を作りたい。「その力をM&Aで獲得したい」——それが今回の依頼の核心でした。
- ミライアはこのご相談を受け、候補先の選定に着手。デジタルマーケティング領域への深い理解を元に、WEB広告の運用実績・ノウハウの蓄積・チームの安定性を軸に複数社をリストアップするなかで、株式会社Aが要件に合致すると判断し、打診へと進みました。
キックオフ・ヒアリング
- 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「どんなクライアントのどんな課題に向き合ってきたか」「WEB広告の市場変化をどう受け止めているか」「譲渡後もマーケターとして走り続けたいか」——代表が長年かけて積み上げてきたチームとノウハウへの敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
- 買い手である株式会社B側からは、「SNS顧客にそのままWEB広告も提供できるチームを取り込みたい」というオーダーをすでに受けていました。そのため株式会社A代表のヒアリングでは、運用実績やスキル構成だけでなく、「このチームがSNSと連動した統合マーケティングを描けるか」という視点を、最初の仕事と位置づけていました。
- WEB広告代理店事業において、ツールの操作スキルだけでなく、顧客の事業目標に対して最適なチャネルミックスを設計できる思考力そのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先のマッチングと初回ご提案
- 成長戦略シートをもとに、株式会社B含めミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「WEB広告チームが加わることで、SNS顧客に提供できるマーケティング価値がどう広がるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、支援領域の補完性・顧客層の重なり・チーム文化の親和性を重視して複数社をご提案。
NDA・アドバイザリー契約の締結
- 初回面談で代表の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。
Phase 2. 事前準備フェーズ
売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。
企業価値の算定
- DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。WEB広告代理店モデルの評価では、管理広告費の総額・運用案件数・クライアントのリピート率・担当者一人あたりの稼働効率がキー項目になります。「市場変化で案件が減少していた」という売り手の課題は逆に、買い手の大手顧客基盤に乗ることで安定した広告運用案件が確保でき、収益が大幅に改善できるシナジーとして評価される要因にもなります。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
- 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。チームのスキル構成と対応可能な広告媒体、主要クライアントの業種分布、管理広告費の推移と収益構造、リスク要因まで、WEB広告代理店モデルの文脈で読める構成にしました。売り手側の日常業務を止めないよう、ドラフトをこちらから提示し、レビューを重ねる進め方で仕上げました。
Phase 3. 打診・初期検討フェーズ
買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。
NDA・アドバイザリー締結と情報開示
- 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。クライアント企業名や広告運用データは特に機密性が高いため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
- 株式会社B側の初期検討における論点——「運用担当者の継続意向は買収後も維持されるか」「主要クライアントとの契約は担当者個人への依存度が高くないか」「SNSと連動した統合提案の経験や意欲はあるか」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。
Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ
トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。
トップ面談のセッティングと同席
- 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「WEB広告事業が向かおうとしていた場所」と「SNS企業が顧客に提供したい統合マーケティングの全体像」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
- 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、運用担当者の待遇水準の維持・代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が”同じ前提で”議論できる場を整えました。
- 市場変化を背景に案件が減少していた経緯もあり、株式価値の算定根拠については両社の認識をすり合わせるのに最も時間を要しました。「現在の数字」ではなく「買収後に実現できるシナジー込みの価値」をどう評価するか——事前に立てたシナジー仮説が共通言語になっていたため、将来像を起点に価格の落としどころを見つけられたことが、このフェーズの大きな手応えでした。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
- 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。
Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ
デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。
DDの調整と専門家連携
- 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務・未払い残業代・進行中の広告運用契約の条件・媒体アカウントの権利帰属等、広告代理店事業特有のリスク確認に特に注力しました。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
- DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
- 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、スムーズな引き継ぎを経て、株式会社BのSNSマーケティング顧客へのWEB広告運用提供が開始。約3ヶ月後には、SNSとWEBを一体で設計する統合デジタルマーケティング体制での正式稼働が始まりました。
結び
WEB広告 × SNSマーケティングという組み合わせは、「同じデジタルマーケティング業界の隣同士」に見えるかもしれません。けれど、両社が共通して向き合っていたのは「顧客の事業成果を、デジタルの力で最大化すること」でした。WEBで刈り取り、SNSで認知を広げる——あるいはSNSで関心を醸成し、WEB広告で購買につなげる。どちらの向きにも機能する統合マーケティングの設計力こそが、今回のM&Aが生み出した最大の価値でした。
株式譲渡という形態は、雇用・待遇・雇用契約をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアはそのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生
株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。
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