ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの”事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、Shopify構築・アプリ開発とD2Cブランド支援という、「ブランドが顧客に直接届く体験を作る」という共通軸を持ちながらも異なるケイパビリティを持つ企業同士の株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までのプロセスを、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。
ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に”何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。
この記事のおすすめ読者
- Shopify構築・アプリ開発事業の継続収益化や案件の深耕を模索している経営者の方
- M&AによってEC構築を内製化し、D2Cブランド支援をワンストップで提供したいと考えている企業の経営層の方
- 技術特化型のスモール企業とブランド支援会社のM&Aがどのようなシナジーを生むかを知りたい方
ケース概要
本ケースは、Shopify構築やアプリ開発に高い技術力を持つ専門会社と、D2Cブランドの立ち上げからマーケティングまでを支援するブランド支援会社による株式譲渡の事例です。技術力には自信を持ちながらも案件が単発で終わりやすく継続収益化に課題を抱えていた売り手側と、EC構築を外注に頼ることで収益機会の取りこぼしが続いていた買い手側——両社の課題が鏡合わせのように補完し合う形で、今回のM&Aは実現しました。
クライアント概要(架空・モデルケース)
譲渡企業(売り手)
- 株式会社A / 従業員約16名 / Shopify構築・アプリ開発事業を運営。
- Shopifyを活用したECサイト構築・カスタムアプリ開発・テーマ制作を法人向けに提供。
譲渡企業(売り手)課題感
- Shopify構築とアプリ開発の技術力は高く、顧客からの評価も高い
- 構築が完了すると案件が終わりになるケースが多く、継続的な収益につながっていない
- ブランド支援や運用コンサルのノウハウを持つパートナーと組むことで、顧客との長期関係を築きたい
譲受企業(買い手)
- 株式会社B / 従業員約60名 / D2Cブランド支援事業を展開。
- D2Cブランドの立ち上げ戦略・ブランディング・SNSマーケティング・顧客獲得まで一貫して支援。
譲受企業(買い手)課題感
- ブランド支援の過程でEC構築が必要になるたびに外注対応となり、品質・納期・コストが安定しない
- EC構築を外注することで生まれるはずの収益機会を取りこぼしており、顧客への提供価値にも限界がある
- Shopify構築を内製化することで、ブランド支援からEC構築まで一気通貫で担える体制を作りたい
取引形態
- 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)
ミライアの役割
- 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。
プロセスの全体像
ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで約8ヶ月のプロセスとなりました。
本件の特徴は、シナジーの双方向性が明確だった点です。株式会社BのD2Cブランド顧客に対してShopify構築を内製で提供できるようになる一方、株式会社Aの構築顧客に対してブランド支援・マーケティングを横展開できる——その双方向のシナジーが、8ヶ月に及ぶプロセスを双方が諦めずに進め続けた原動力となりました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ
売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。
株式会社B(買い手)からの依頼
- 今回のプロセスは、買い手である株式会社B側からのご相談を起点に始まりました。
- D2Cブランド支援で60名規模まで成長してきた株式会社Bは、ブランドの立ち上げから販売促進まで一貫して支援できる強みを持つ一方で、ECサイト構築が必要になるたびに外注対応を余儀なくされていました。外注では品質のばらつきや納期の遅延が生じやすく、顧客のブランド立ち上げスピードに開発が追いつかないケースが続いていました。また、EC構築という収益機会を外注先に渡すことへの課題意識も高まっていました。「Shopify構築の内製体制を持ち、D2Cブランド支援をワンストップで提供できる体制を作りたい。その力をM&Aで獲得したい」——それが今回の依頼の核心でした。
- ミライアはこのご相談を受け、候補先の選定に着手。EC・D2C領域への深い理解を元に、Shopifyの技術力・構築実績・アプリ開発力・チームの安定性を軸に複数社をリストアップするなかで、株式会社Aが要件に合致すると判断し、打診へと進みました。
キックオフ・ヒアリング
- 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「なぜShopifyの構築・開発に特化しようと思ったのか」「どんなブランドのどんなEC体験を作ることに喜びを感じてきたか」「譲渡後もShopify開発の現場に立ち続けたいか」——代表が積み上げてきた技術とチームへの敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
- 買い手である株式会社B側からは、「D2Cブランド顧客のEC構築をそのまま内製で担えるShopify専門チームを取り込みたい」というオーダーをすでに受けていました。そのため株式会社A代表のヒアリングでは、技術仕様やアプリ開発の実績だけでなく、「このチームがブランドの世界観を理解したうえでECサイトを設計できるか」という視点を、最初の仕事と位置づけていました。
- Shopify構築事業において、技術スキルの高さだけでなく、ブランドのコンセプトやターゲット顧客の購買体験を深く理解したうえでサイト設計に落とし込める力そのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先の選定
- 成長戦略シートをもとに、株式会社B含めミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「Shopify専門チームが加わることで、D2Cブランド支援の顧客に提供できる価値がどう広がるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、対応可能なEC領域の幅・D2Cブランドへの理解度・チーム文化の親和性を重視して複数社をご提案。
NDA・アドバイザリー契約の締結
- 初回面談で代表の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。
Phase 2. 事前準備フェーズ
売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。
企業価値の算定
- DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。
- Shopify構築事業の評価では、過去案件の規模・単価・リピート率・対応可能なShopifyプランの幅・アプリ開発実績・エンジニアのスキル構成がキー項目になります。「案件が単発で終わりやすく継続収益が低かった」という売り手の課題は逆に、買い手のD2Cブランド顧客基盤に乗ることでEC構築後の継続支援案件が生まれ、LTVが大幅に改善できるシナジーとして評価される要因にもなります。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
- 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。エンジニアのスキル構成と対応可能なShopify領域、過去構築案件のプロファイル、顧客の業種・ブランド規模の分布、売上構造とリピート率の推移、リスク要因まで、Shopify構築事業の文脈で読める構成にしました。売り手側の日常業務を止めないよう、ドラフトをこちらから提示し、レビューを重ねる進め方で仕上げました。
Phase 3. 打診・初期検討フェーズ
買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。
NDA・アドバイザリー締結と情報開示
- 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。過去の構築案件の詳細やブランド顧客名は特に機密性が高いため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
- 株式会社B側の初期検討における論点——「Shopifyエンジニアの継続意向は買収後も維持されるか」「D2Cブランドの世界観に沿ったサイト設計の経験はあるか」「アプリ開発の知財・ライセンス関係は株式譲渡後に問題なく引き継げるか」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。
Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ
トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。
トップ面談のセッティングと同席
- 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「Shopify構築事業がブランドのEC体験に込めてきた思い」と「D2Cブランド支援会社が顧客ブランドの成長に描く未来像」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
- 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、Shopifyエンジニアの待遇水準の維持・代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が”同じ前提で”議論できる場を整えました。
- 少数精鋭のクリエイティブ文化を持つ株式会社Aが、60名規模の組織に統合されることへの懸念は、双方が最も丁寧に向き合った論点でした。エンジニアの裁量・案件選択の自由度・クリエイティブな環境をどう守るか——買い手側が「Shopify専門チームとしての独立性を一定期間保つ」という具体的な組織設計を示したことで、この論点の合意をはやめることができました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
- 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。
Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ
デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。
DDの調整と専門家連携
- 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務・未払い残業代・Shopifyアプリの知的財産権帰属・過去案件における著作権処理の状況等、EC開発事業特有のリスク確認に特に注力しました。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
- DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
- 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、スムーズな引き継ぎを経て、株式会社BのD2Cブランド顧客へのShopify構築提供が開始。約3ヶ月後には、ブランド戦略の立案からECサイトの構築・マーケティング支援まで一気通貫で担う新体制での正式稼働が始まりました。
結び
Shopify構築 × D2Cブランド支援という組み合わせは、「作る側と育てる側、役割の異なる二社」に見えるかもしれません。けれど、両社が共通して向き合っていたのは「D2Cブランドが、自分たちの世界観を顧客に直接届けられる環境を作ること」でした。ブランドコンセプトを体現したECサイトを構築し、そこに顧客を引き込み、継続的に関係を育てる——その一連の流れを一社で担える体制が、今回のM&Aで初めて実現しました。
株式譲渡という形態は、雇用・待遇・雇用契約をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアはそのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生
株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。
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