ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの”事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、Web広告運用と動画制作という、「顧客の認知拡大と集客を支える」という共通軸を持ちながらも異なるケイパビリティを持つ企業同士の株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までのプロセスを、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。
ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に”何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。
この記事のおすすめ読者
- Web広告事業のクリエイティブ内製化や利益率改善を模索している経営者の方
- M&Aによって広告代理店との接点を強化し、営業チャネルを拡大したい動画制作会社の経営層の方
- 広告運用力とクリエイティブ制作力という異なるケイパビリティが、M&Aでどう統合されるかを知りたい方
ケース概要
本ケースは、リスティング広告やSNS広告運用を中心に企業の集客支援を展開するWeb広告代理店と、企業PR動画や広告動画の制作を全国で手がける動画制作会社による株式譲渡の事例です。広告運用のノウハウを持ちながらも動画クリエイティブを外注しており利益率の改善に課題を抱えていた売り手側と、高品質なクリエイティブ制作力を持ちながらも営業チャネルの拡大が課題だった買い手側——両社の課題が鏡合わせのように補完し合う形で、今回のM&Aは実現しました。
クライアント概要(架空・モデルケース)
譲渡企業(売り手)
- 株式会社A / 従業員約70名 / Web広告代理店事業を運営。
- リスティング広告・SNS広告・ディスプレイ広告の運用を中心に、企業の集客・CVR向上を支援。
譲渡企業(売り手)課題感
- 広告運用のノウハウと実績は豊富だが、動画クリエイティブを外注しているため利益率が低い
- 外注では納期やクオリティのコントロールが難しく、広告成果の最大化に支障が出るケースがある
- クリエイティブ制作を内製化することで、広告戦略と制作を一体で最適化できる体制を作りたい
譲受企業(買い手)
- 株式会社B / 従業員約320名 / 動画制作事業を全国展開。
- 企業PR動画・採用動画・Web広告用動画・SNSショート動画など幅広いジャンルの制作を提供。
譲受企業(買い手)課題感
- 動画制作の品質と実績には強みがあるが、営業チャネルが直接受注中心で拡大に限界がある
- 広告代理店経由の案件獲得を増やしたいが、代理店との継続的な関係構築が難しい
- 広告運用会社を取り込むことで安定した動画制作の発注元を確保し、営業効率を高めたい
取引形態
- 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)
ミライアの役割
- 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。
プロセスの全体像
ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで約6ヶ月のプロセスとなりました。
本件の特徴は、シナジーの双方向性が明確だった点です。株式会社Aの広告運用顧客に対して株式会社Bの動画制作を内製で提供できるようになる一方、株式会社Bの動画制作顧客に対して株式会社Aの広告運用支援を横展開できる——その双方向のシナジーが、6ヶ月という短期間での成約を可能にしました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ
売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。
株式会社B(買い手)からの依頼
- 今回のプロセスは、買い手である株式会社B側からのご相談を起点に始まりました。
- 全国320名体制で動画制作事業を展開してきた株式会社Bは、高品質なクリエイティブ制作に強みを持つ一方で、営業チャネルが直接受注中心であることへの構造的な課題を感じていました。広告代理店から継続的に案件を受注できる関係を築けていないまま、各企業への個別営業に依存する状況が続いていました。「広告運用会社を取り込むことで、動画クリエイティブの安定した発注元を社内に持ちたい。同時に広告代理店としての顧客接点を活かして動画制作の営業チャネルを広げたい」——それが今回の依頼の核心でした。
- ミライアはこのご相談を受け、候補先の選定に着手。広告・クリエイティブ領域への深い理解を元に、広告運用の実績・動画クリエイティブの発注量・顧客基盤の規模・チームの安定性を軸に複数社をリストアップするなかで、株式会社Aが要件に合致すると判断し、打診へと進みました。
キックオフ・ヒアリング
- 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「なぜWeb広告運用という事業を選んだのか」「外注クリエイティブの限界をどんな場面で感じてきたか」「譲渡後も広告の現場に関わり続けたいか」——代表が積み上げてきた運用ノウハウとチームへの敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
- 買い手である株式会社B側からは、「動画クリエイティブを継続的に必要とする広告運用会社の顧客基盤と、その運用ノウハウを取り込みたい」というオーダーをすでに受けていました。そのため株式会社A代表のヒアリングでは、管理広告費の規模や運用実績だけでなく、「このチームが動画クリエイティブの効果を最大化する広告設計ができるか」という視点を、最初の仕事と位置づけていました。
- Web広告代理店事業において、媒体ごとの運用スキルだけでなく、クリエイティブと配信戦略を一体で考えられる思考力そのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先の選定
- 成長戦略シートをもとに、株式会社B含めミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「Web広告運用チームが加わることで、動画制作会社の顧客に提供できる価値がどう広がるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、動画クリエイティブへの発注量・顧客層の重なり・チーム文化の親和性を重視して複数社をご提案。
NDA・アドバイザリー契約の締結
- 初回面談で代表の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。
Phase 2. 事前準備フェーズ
売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。
企業価値の算定
- DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。Web広告代理店モデルの評価では、管理広告費の総額・運用案件数・顧客単価・リピート率・外注クリエイティブ費用の割合がキー項目になります。「クリエイティブを外注していたため利益率が低かった」という売り手の課題は逆に、買い手の制作体制と統合することで外注費が内部化されて利益率が大幅に改善できるシナジーとして評価される要因にもなります。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
- 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。チームの運用スキル構成と対応可能な広告媒体、主要クライアントの業種分布、管理広告費と売上の推移、外注クリエイティブ費用の構造、リスク要因まで、Web広告代理店事業の文脈で読める構成にしました。売り手側の日常業務を止めないよう、ドラフトをこちらから提示し、レビューを重ねる進め方で仕上げました。
Phase 3. 打診・初期検討フェーズ
買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。
NDA・アドバイザリー締結と情報開示
- 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。顧客企業名や広告運用データは特に機密性が高いため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
- 株式会社B側の初期検討における論点——「広告運用担当者の継続意向は買収後も維持されるか」「動画クリエイティブの内製化によって既存の外注先との契約はどう整理するか」「広告運用顧客への動画制作のクロスセルはどのタイミングから開始できるか」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。
Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ
トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。
トップ面談のセッティングと同席
- 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「Web広告代理店が顧客の集客に届けようとしていた成果の姿」と「動画制作会社がクリエイティブに込めてきた思いと目指す広がり」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
- 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、広告運用担当者の待遇水準の維持・代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が”同じ前提で”議論できる場を整えました。
- 既存の外注クリエイティブ先との契約整理については、最も法的・実務的な整理が必要だった論点でした。株式会社Aが複数の動画制作会社と継続契約を結んでいた中で、買収後に株式会社Bが内製で対応できる範囲とそうでない範囲を整理し、既存の外注先との関係をどう着地させるかを弁護士と連携して早期に設計したことが、後続のDD・SPA交渉をスムーズに展開させました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
- 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。
Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ
デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。
DDの調整と専門家連携
- 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務・未払い残業代・進行中の広告運用契約の条件・外注クリエイティブ先との契約内容・媒体アカウントの権利帰属等、広告代理店事業特有のリスク確認に特に注力しました。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
- DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
- 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、スムーズな引き継ぎを経て、株式会社Aの広告運用顧客へのクリエイティブ内製提供が開始。約3ヶ月後には、広告戦略の立案から動画クリエイティブの制作・配信最適化まで一気通貫で担う新体制での正式稼働が始まりました。
結び
Web広告代理店 × 動画制作会社という組み合わせは、「運用と制作、役割の異なる二社」に見えるかもしれません。けれど、両社が共通して向き合っていたのは「顧客の広告が、ターゲットに届いて成果を生むこと」でした。どれだけ精緻な運用戦略を立てても、クリエイティブが刺さらなければ成果は出ない。どれだけ高品質な動画を作っても、正しい配信設計がなければ届かない。その両方を一社で担える体制が、今回のM&Aで初めて実現しました。
株式譲渡という形態は、雇用・待遇・雇用契約をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアはそのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生
株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。
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