ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの”事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、MAツール導入支援とCRMコンサルティングという、「企業と顧客の関係を最大化する」という共通軸を持ちながらも異なるケイパビリティを持つ企業同士の株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までのプロセスを、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。
ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に”何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。
この記事のおすすめ読者
- MAツール導入支援事業の上流展開や支援領域の拡充を模索している経営者の方
- M&AによってMAツールの実行支援体制を内製化し、CRMコンサルとMAを一体で提供したいと考えている企業の経営層の方
- MAツール実装力とCRM戦略力という異なるケイパビリティが、M&Aでどう統合されるかを知りたい方
ケース概要
本ケースは、MAツールの導入・運用支援に豊富な実績を持つ専門会社と、CRM戦略や営業改革コンサルティングを全国で展開する中堅企業による株式譲渡の事例です。MAの実行支援に強みを持ちながらも支援領域を営業改革や顧客戦略まで拡大できていなかった売り手側と、CRM戦略の立案は得意ながらもMAツール導入の実行支援体制が不足していた買い手側——両社の課題が鏡合わせのように補完し合う形で、今回のM&Aは実現しました。
クライアント概要(架空・モデルケース)
譲渡企業(売り手)
- 株式会社A / 従業員約50名 / MAツール導入支援事業を運営。
- HubSpot・Marketo・Pardotなど主要MAツールの導入設計・初期設定・運用伴走支援を法人向けに提供。
譲渡企業(売り手)課題感
- MAツールの導入から運用定着まで幅広い支援実績があるが、なぜそのMAを使うかという戦略立案には関与できていない
- 顧客から「CRM全体の設計や営業プロセスの改革も一緒に見てほしい」という要望が増えているが、対応できていない
- CRM戦略や営業改革まで提案できるパートナーと組むことで、上流から関与できる体制を作りたい
譲受企業(買い手)
- 株式会社B / 従業員約300名 / CRMコンサルティング事業を全国展開。
- 顧客戦略・営業プロセス設計・CRMシステム選定・組織変革まで一貫して支援。
譲受企業(買い手)課題感
- CRM戦略の立案と推進は得意だが、MAツールの具体的な導入・設定・運用支援を担える体制が社内にない
- 戦略を描いた後のMAツール実装を外注に頼ることで、コンサルの意図が実装に正確に反映されないケースがある
- MAツール導入支援の実行体制を内製化し、戦略から実装まで一貫して品質をコントロールしたい
取引形態
- 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)
ミライアの役割
- 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。
プロセスの全体像
ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで約9ヶ月のプロセスとなりました。
本件の特徴は、シナジーの構造的な強さと、統合後のサービス設計の複雑さが共存していた点です。CRM戦略とMAツール実装という二つの専門性を一社で提供できる価値は明確でしたが、コンサルタントと実装エンジニアの協働体制をどう設計するか、価格設定と提案モデルをどう統合するかという論点の整理に時間を要しました。その議論を丁寧に重ねたことが、成約後のスムーズな統合につながりました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ
売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。
株式会社B(買い手)からの依頼
- 今回のプロセスは、買い手である株式会社B側からのご相談を起点に始まりました。
- CRMコンサルティングで300名規模まで成長してきた株式会社Bは、顧客戦略・営業プロセス改革の立案と推進に強みを持つ一方で、MAツールの具体的な実装フェーズを外注に依存することへのジレンマを抱えていました。戦略を描いたコンサルタントの意図がMAツールの設定に正確に反映されないまま、顧客の期待する成果が出ないケースが続いていました。「MAツールの導入・運用支援を担える専門チームを内製で持ちたい。M&Aで実績ある会社を取り込むことが最も効率的と判断した」——それが今回の依頼の核心でした。
- ミライアはこのご相談を受け、候補先の選定に着手。マーケティングテック・コンサルティング領域への深い理解を元に、対応可能なMAツールの幅・導入実績・運用定着支援のノウハウ・チームの安定性を軸に複数社をリストアップするなかで、株式会社Aが要件に合致すると判断し、打診へと進みました。
キックオフ・ヒアリング
- 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「なぜMAツール導入支援という事業を選んだのか」「ツールを入れるだけでなく使いこなせるようにしたいという思いの背景は何か」「譲渡後もMAの現場に関わり続けたいか」——代表が積み上げてきたノウハウとチームへの敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
- 買い手である株式会社B側からは、「CRMコンサルの顧客に対してMAツールの実装と運用をそのまま担えるチームを取り込みたい」というオーダーをすでに受けていました。そのため株式会社A代表のヒアリングでは、ツール操作スキルや導入実績だけでなく、「このチームがCRM戦略の文脈を理解したうえでMAを設計できるか」という視点を、最初の仕事と位置づけていました。
- MAツール導入支援事業において、ツールの設定スキルだけでなく、顧客のマーケティングファネルと営業プロセスを理解したうえで最適なMA設計を提案できる力そのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先の選定
- 成長戦略シートをもとに、株式会社B含めミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「MAツール導入支援チームが加わることで、CRMコンサル顧客に提供できる価値がどう広がるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、対応可能なMAツールとCRMシステムの親和性・顧客層の重なり・支援思想の一致を重視して複数社をご提案。
NDA・アドバイザリー契約の締結
- 初回面談で代表の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。
Phase 2. 事前準備フェーズ
売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。
企業価値の算定
- DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。MAツール導入支援モデルの評価では、対応可能なMAツールの種類・過去導入案件の規模と単価・リピート率・運用支援の継続契約率・コンサルタントのスキル構成がキー項目になります。「支援領域を営業改革や顧客戦略まで拡大できていなかった」という売り手の課題は逆に、買い手のCRMコンサル体制と組み合わせることで上流から関与できる案件が増え、単価と継続率が大幅に改善できるシナジーとして評価される要因にもなります。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
- 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。対応可能なMAツールと導入実績・コンサルタントのスキル構成、過去案件のプロファイルと顧客業種の分布、売上構造とリピート率の推移、リスク要因まで、MAツール導入支援事業の文脈で読める構成にしました。売り手側の日常業務を止めないよう、ドラフトをこちらから提示し、レビューを重ねる進め方で仕上げました。
Phase 3. 打診・初期検討フェーズ
買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。
NDA・アドバイザリー締結と情報開示
- 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。顧客企業名やMAの設定内容・マーケティングデータは特に機密性が高いため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
- 株式会社B側の初期検討における論点——「MAツール導入支援チームの継続意向は買収後も維持されるか」「CRMコンサルタントとMAエンジニアが協働する際の業務フローはどう設計するか」「対応可能なMAツールのラインナップはCRM顧客が使っているシステムと親和性があるか」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。
Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ
トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。
トップ面談のセッティングと同席
- 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「MAツール導入支援事業が顧客のマーケティングに届けようとしていた変化」と「CRMコンサル会社が顧客の営業・マーケティング全体に実現したい成果の姿」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
- 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、MAツール担当者の待遇水準の維持・代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が”同じ前提で”議論できる場を整えました。
- 本件は成約まで約9ヶ月を要しましたが、その多くは統合後のサービス提供モデルの設計と価格評価のすり合わせに費やされました。「CRMコンサルタントとMAエンジニアが一つのプロジェクトでどう協働するか」「統合後のサービスパッケージをどう設計し、どう価格づけするか」——これらの論点を丁寧に議論し、統合後の事業計画を双方が納得できる形に仕上げたことが、最終的な合意を可能にしました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
- 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。
Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ
デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。
DDの調整と専門家連携
- 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務・未払い残業代・顧客との運用支援契約の条件・MAツールベンダーとのパートナー契約の引き継ぎ可否等、MAツール支援事業特有のリスク確認に特に注力しました。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
- DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
- 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、スムーズな引き継ぎを経て、株式会社BのCRMコンサル顧客へのMAツール導入支援の統合提供が開始。約4ヶ月後には、CRM戦略の立案からMAツールの設計・導入・運用定着まで一気通貫で担う新体制での正式稼働が始まりました。
結び
MAツール導入支援 × CRMコンサルティングという組み合わせは、「実装と戦略、役割の異なる二社」に見えるかもしれません。けれど、両社が共通して向き合っていたのは「企業と顧客の関係を、データとプロセスで最大化すること」でした。CRM戦略で顧客との向き合い方を設計し、MAツールでその接点を自動化・最適化する——その全体を一社で担える体制が、今回のM&Aで初めて実現しました。
株式譲渡という形態は、雇用・待遇・雇用契約をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアはそのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生
株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。
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