就業後の生活支援体制が手薄な外国人材紹介会社が、
人材派遣会社の受け入れ体制を活用し、
外国人材の定着支援を強化した、成長戦略型M&A

外国人材紹介会社の「次の打ち手」を、成長戦略型M&Aで実現した1件。
メール送付からクロージング(SPA締結)まで、ミライアが伴走した全5フェーズの工程をご紹介します。

  • 読了時間約10分
  • 扱う業界人材 / 人材
  • 扱う業種外国人材紹介 / 人材派遣
  • 組織規模10人以下
  • 最終更新2026年7月

ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの”事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、外国人材紹介と人材派遣という、「人手不足の現場に人材を届ける」という共通軸を持ちながらも異なるケイパビリティを持つ企業同士の株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までのプロセスを、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。

ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に”何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。

この記事のおすすめ読者

  • 外国人材紹介事業の就業後サポート体制の強化や事業規模の拡大を模索している経営者の方
  • M&Aによって外国人材の紹介チャンネルを取り込み、派遣人材の確保力を強化したいと考えている企業の経営層の方
  • 外国人材紹介ネットワークと国内派遣の販路という異なるケイパビリティが、M&Aでどのようなシナジーを生むかを知りたい方

ケース概要

本ケースは、特定技能・技術人文知識国際業務など外国人材の紹介を得意とする専門会社と、製造・建設・介護業への強い販路を持つ人材派遣会社による株式譲渡の事例です。送り出し機関との豊富なネットワークを持ちながらも就業後の生活支援体制の強化に課題を抱えていた売り手側と、国内産業の人手不足という構造的な課題に直面しながらも外国人材の紹介チャンネルを持たなかった買い手側——両社の課題が鏡合わせのように補完し合う形で、今回のM&Aは実現しました。

クライアント概要(架空・モデルケース)


譲渡企業(売り手)

  • 株式会社A / 従業員約5名 / 外国人材紹介事業を運営。
  • 特定技能・技術人文知識国際業務を中心に、複数の送り出し機関とのネットワークを活用した外国人材の紹介を提供。

譲渡企業(売り手)課題感

  • 送り出し機関との関係構築と外国人材の紹介実績は積み上がっているが、就業後の生活サポート体制が手薄になっている
  • 住居確保・行政手続き支援・日本語学習サポートなど就業後のフォローに対応できるリソースが5名体制では限界がある
  • 外国人材が安心して定着できる環境を整えられるパートナーと組み、より責任ある支援体制を作りたい

譲受企業(買い手)

  • 株式会社B / 従業員約180名 / 人材派遣事業を展開。
  • 製造業・建設業・介護業を中心に人材派遣を全国展開し、多数の企業と取引実績を持つ。

譲受企業(買い手)課題感

  • 製造・建設・介護業の顧客から人手不足の深刻化を受け、国内人材だけでは供給が追いつかない状況が続いている
  • 外国人材の紹介チャンネルを持っていないため、増加する外国人材ニーズに応えられていない
  • 送り出し機関とのネットワークと外国人材紹介のノウハウを持つ会社をM&Aで取り込み、紹介できる人材の幅を広げたい

取引形態

  • 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)

ミライアの役割

  • 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。

プロセスの全体像

ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで約4ヶ月のプロセスとなりました。

本件の特徴は、シナジーの即効性と社会的な必要性が共存していた点です。株式会社Bの製造・建設・介護業の顧客は外国人材の受け入れ体制を整えており、株式会社Aの送り出し機関ネットワークはその需要にそのまま応えられる。さらに、株式会社Bの180名体制による就業後の受け入れ環境は、株式会社Aが課題としてきた生活支援体制の問題を一気に解決できる——その構図の明確さが、4ヶ月という短期間での成約を可能にしました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ

売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。

株式会社A(売り手)からの相談
  • 今回のプロセスは、売り手である株式会社A側からのご相談を起点に始まりました。
  • 外国人材紹介で5名規模まで事業を育ててきた株式会社Aは、送り出し機関との信頼関係と外国人材紹介のノウハウを着実に積み上げてきました。しかし、紹介後に課題が生じていました。就業した外国人材が住居の確保・行政手続き・日本語学習などで困っても、5名体制では対応が追いつかない。外国人材が安心して日本で働き続けるためには、就業後の生活全体をサポートできる体制が不可欠だと痛感していました。「自分たちのネットワークを活かしながら、より大きな組織のリソースで外国人材をしっかり支えたい。統合によってそれを実現できるパートナーを探したい」——そうした思いを持ちミライアに相談を持ちかけました。
キックオフ・ヒアリング
  • 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「なぜ外国人材の紹介という事業を選んだのか」「日本で働く外国人材にどんな未来を届けたかったのか」「譲渡後も外国人材支援の現場に関わり続けたいか」——代表が少人数で築いてきた送り出し機関との信頼とネットワークへの敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
  • ミライアはこのヒアリングを通じて、株式会社Aが求めているのは単なる売却ではなく「外国人材が就業後も安心して働き続けられる環境を、より大きな組織の力で整えたい」という思いであることを確認しました。その文脈を、買い手候補に正確に伝えることが、このフェーズの最初の仕事でした。
  • 外国人材紹介事業において、送り出し機関とのネットワークだけでなく、外国人材一人ひとりの不安や生活課題に向き合ってきた現場の経験値そのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先の選定
  • 成長戦略シートをもとに、ミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「外国人材紹介のネットワークが加わることで、派遣会社の人材供給力がどう広がるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、受け入れ業種の親和性・外国人材の就業後サポートへの意識・組織文化の重なりを重視して複数社をご提案。
NDA・アドバイザリー契約の締結
  • 初回面談で双方の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。

Phase 2. 事前準備フェーズ

売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。

企業価値の算定
  • DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。外国人材紹介事業の評価では、送り出し機関の数と関係の深さ・年間紹介決定数・対応可能な在留資格の種類・受け入れ先企業の業種分布がキー項目になります。5名という小規模ながら、「送り出し機関との深いネットワーク」という資産は、大規模な派遣会社が単独で構築するには時間とコストがかかるものであり、M&Aによる獲得価値として高く評価される要因になります。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
  • 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。送り出し機関の国別・規模別の構成、紹介実績と対応可能な在留資格の種類、受け入れ先企業の業種と規模の分布、売上構造とリピート率の推移、リスク要因まで、外国人材紹介事業の文脈で読める構成にしました。売り手側の日常業務を止めないよう、ドラフトをこちらから提示し、レビューを重ねる進め方で仕上げました。

Phase 3. 打診・初期検討フェーズ

買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。

NDA・アドバイザリー締結と情報開示
  • 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。送り出し機関との契約条件や外国人材の個人情報は特に機密性が高いため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
  • 株式会社B側の初期検討における論点——「送り出し機関との関係は代表個人に依存していないか」「在留資格の申請・更新に関する対応ノウハウは引き継げるか」「既存の受け入れ先企業との契約は株式譲渡後も継続できるか」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。

Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ

トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。

トップ面談のセッティングと同席
  • 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「外国人材紹介事業が外国人の方々にどんな働く機会と生活を届けようとしてきたか」と「派遣会社として人手不足の現場にどう向き合い、外国人材の受け入れをどう設計していきたいか」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
  • 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が”同じ前提で”議論できる場を整えました。
  • 送り出し機関との関係が代表個人への信頼に基づいている側面があることから、代表の継続関与については両社が最も丁寧に議論した論点でした。「買収後も代表が一定期間、送り出し機関との窓口として関与し続けることで関係の継続を担保する」という移行設計を早期に合意したことが、交渉全体をスムーズに進める大きな手応えとなりました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
  • 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。

Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ

デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。

DDの調整と専門家連携
  • 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務・未払い残業代・職業紹介事業の許可証の有効性・送り出し機関との契約条件・在留資格申請に関連する法令遵守状況等、外国人材紹介事業特有のリスク確認に特に注力しました。出入国在留管理法・労働関連法規・個人情報保護法の観点からの確認も重点的に実施しました。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
  • DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
  • 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、スムーズな引き継ぎを経て、株式会社Bの製造・建設・介護業顧客への外国人材の紹介が段階的に開始。約3ヶ月後には、送り出し機関からの紹介・就業後の生活サポート・派遣先での定着支援まで一気通貫で担う新体制での正式稼働が始まりました。

結び

顧客が本当に求めているのは、外国人材の紹介でも派遣でもなく、その先にある「外国人材が安心して働き続け、現場の人手不足が本当の意味で解消されること」です。送り出し機関から紹介し、就業後の生活をサポートし、職場での定着まで支援する——その一連の流れを一社で担える体制が、今回のM&Aで初めて実現しました。

株式譲渡という形態は、雇用・待遇・雇用契約をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアはそのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生

株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。

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