紹介手数料に依存する保育士人材紹介会社が、
保育ICTの全国顧客基盤を活用し、
採用支援の統合提案で収益を多様化した、成長戦略型M&A

保育士人材紹介会社の「次の打ち手」を、成長戦略型M&Aで実現した1件。
メール送付からクロージング(SPA締結)まで、ミライアが伴走した全5フェーズの工程をご紹介します。

  • 読了時間約10分
  • 扱う業界人材 / IT
  • 扱う業種保育士人材紹介 / 保育ICT
  • 組織規模11〜50人
  • 最終更新2026年7月

ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの”事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、保育士人材紹介と保育ICTという、「保育園の運営を支える」という共通軸を持ちながらも異なるケイパビリティを持つ企業同士の株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までのプロセスを、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。

ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に”何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。

この記事のおすすめ読者

  • 保育士人材紹介事業の収益多様化や保育園との関係深耕を模索している経営者の方
  • M&AによってICT顧客への採用支援を強化し、保育園への一気通貫サービスを実現したいと考えている企業の経営層の方
  • 保育士ネットワークとICTプロダクトという異なるケイパビリティが、M&Aでどのようなシナジーを生むかを知りたい方

ケース概要

本ケースは、保育士・幼稚園教諭の人材紹介を専門とする会社と、保育園向けICTシステムや登降園管理システムを全国展開する企業による株式譲渡の事例です。保育園とのネットワークは豊富ながらも紹介手数料以外の収益源が乏しいことに課題を抱えていた売り手側と、全国の保育施設への導入実績を持ちながらも採用支援サービスの強化が課題だった買い手側——両社の課題が鏡合わせのように補完し合う形で、今回のM&Aは実現しました。

クライアント概要(架空・モデルケース)


譲渡企業(売り手)

  • 株式会社A / 従業員約40名 / 保育士人材紹介事業を運営。
  • 保育士・幼稚園教諭・保育補助スタッフの紹介を専門とし、認可保育園・認定こども園・私立幼稚園と幅広く取引。

譲渡企業(売り手)課題感

  • 保育園とのネットワークと人材紹介の実績は豊富だが、採用が決まらなければ収益がゼロになる構造に依存している
  • 紹介手数料以外に継続的な収益を生む仕組みがなく、事業の安定性に課題がある
  • 保育園が抱える採用以外の運営課題にも応えられるサービスを持つパートナーと組み、収益の多様化と関係の深耕を実現したい

譲受企業(買い手)

  • 株式会社B / 従業員約150名 / 保育ICT事業を展開。
  • 登降園管理・連絡帳アプリ・シフト管理・請求管理など保育園の業務効率化を支援するICTシステムを全国展開。

譲受企業(買い手)課題感

  • 保育施設へのICT導入実績は高いが、「保育士が採用できない」という顧客からの声が多く採用支援への需要が明確にある
  • 人材紹介サービスを持たないため、保育園との関係をICT導入後に深耕できていない
  • 保育士人材紹介のノウハウとネットワークをM&Aで取り込み、ICTと採用支援を一体で提供できる体制を作りたい

取引形態

  • 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)

ミライアの役割

  • 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。

プロセスの全体像

ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで約6ヶ月のプロセスとなりました。

本件の特徴は、シナジーの即効性と顧客基盤の重なりが極めて明確だった点です。株式会社BのICT顧客である保育園はそのまま保育士採用の潜在顧客でもあり、株式会社Aの人材紹介ネットワークはその需要にそのまま応えられる。さらに、株式会社Aが保育園との信頼関係を通じて得ている現場の情報は、ICTプロダクトの改善にも活かせる——その双方向のシナジーが、6ヶ月という期間での成約を後押ししました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ

売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。

株式会社B(買い手)からの依頼
  • 今回のプロセスは、買い手である株式会社B側からのご相談を起点に始まりました。
  • 保育ICT事業で150名規模まで成長してきた株式会社Bは、全国の保育施設にシステムを導入してきた中で、ある共通の課題を繰り返し耳にしていました。「ICTを入れて業務は楽になったが、保育士が足りなくて現場が回らない」——そうした声に応えられないまま、顧客との関係がICT導入で止まっていました。「保育士の採用支援機能をM&Aで取り込み、保育園の運営課題に採用とICTの両面から応えられる体制を作りたい」——それが今回の依頼の核心でした。
  • ミライアはこのご相談を受け、候補先の選定に着手。保育・HRtech領域への深い理解を元に、保育士の紹介実績・保育園ネットワークの質と広がり・対応可能な施設種別の幅・チームの安定性を軸に複数社をリストアップするなかで、株式会社Aが要件に合致すると判断し、打診へと進みました。
キックオフ・ヒアリング
  • 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「なぜ保育士人材紹介に特化しようと思ったのか」「保育の現場を支えることへのこだわりはどこから来ているのか」「譲渡後も保育業界の採用支援に関わり続けたいか」——代表が積み上げてきた保育園とのネットワークとチームへの敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
  • 買い手である株式会社B側からは、「ICT顧客の保育園に対して保育士採用支援をそのまま提供できるチームを取り込みたい」というオーダーをすでに受けていました。そのため株式会社A代表のヒアリングでは、紹介実績の数だけでなく、「このチームが保育園の経営課題を深く理解したうえで採用提案ができるか」という視点を、最初の仕事と位置づけていました。
  • 保育士人材紹介事業において、職種別の紹介スキルだけでなく、保育園の理念・定員規模・立地・経営方針を理解したうえで最適な人材を提案できる力そのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先の選定
  • 成長戦略シートをもとに、株式会社B含めミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「保育士人材紹介チームが加わることで、ICT顧客の保育園に提供できる価値がどう広がるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、顧客層の重なり・保育業界への向き合い方の親和性・チーム文化の一致を重視して複数社をご提案。
NDA・アドバイザリー契約の締結
  • 初回面談で代表の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。

Phase 2. 事前準備フェーズ

売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。

企業価値の算定
  • DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。保育士人材紹介事業の評価では、年間紹介決定数・平均手数料単価・取引保育園数・対応可能な職種と施設種別の幅・エージェントの保育業界知識の深さがキー項目になります。「手数料収益に依存していた」という売り手の課題は逆に、買い手のICT顧客基盤に乗ることで安定した紹介案件が供給され、収益の安定化と多様化が実現できるシナジーとして評価される要因にもなります。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
  • 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。エージェントのスキル構成と対応可能な職種・施設種別、取引保育園のプロファイルと地域分布、年間紹介決定数と売上の推移、リスク要因まで、保育士人材紹介事業の文脈で読める構成にしました。保育園との関係情報は機密性が高いため、匿名化の範囲を売り手と丁寧に確認しながら仕上げました。

Phase 3. 打診・初期検討フェーズ

買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。

NDA・アドバイザリー締結と情報開示
  • 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。取引保育園の情報や保育士候補者の個人情報は特に機密性が高いため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
  • 株式会社B側の初期検討における論点——「エージェントの継続意向は買収後も維持されるか」「ICTの顧客保育園と人材紹介の取引保育園の重複はどの程度あるか」「保育士候補者の個人情報管理体制は個人情報保護法上の問題がないか」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。

Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ

トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。

トップ面談のセッティングと同席
  • 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「保育士人材紹介事業が保育の現場に届けてきた支援の本質」と「保育ICT企業が保育園に実現したい運営効率化と支援の全体像」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
  • 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、エージェントの待遇水準の維持・代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が”同じ前提で”議論できる場を整えました。
  • ICTと人材紹介という二つのサービスを同一の保育園に提供する際のクロスセルの設計については、両社が最も具体的な議論を要した論点でした。ICT担当者が採用の話を持ち込む際のルール設計、逆に採用担当者がICTを紹介する際のインセンティブ設計——双方の現場が自然に連携できる仕組みを早期に描いたことが、合意形成をはやめる大きな手応えとなりました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
  • 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。

Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ

デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。

DDの調整と専門家連携
  • 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務・未払い残業代・職業紹介事業の許可証の有効性・保育士候補者データの個人情報管理体制・取引保育園との契約条件等、保育士人材紹介事業特有のリスク確認に特に注力しました。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
  • DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
  • 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、スムーズな引き継ぎを経て、株式会社BのICT顧客保育園への保育士採用支援の統合提案が開始。約3ヶ月後には、ICTによる業務効率化と保育士採用支援を一体で提供する新体制での正式稼働が始まりました。

結び

顧客が本当に求めているのは、ICTでも人材紹介でもなく、その先にある「保育士が確保でき、業務も効率化されて、子どもたちに向き合える保育園であること」です。システムで業務負担を減らし、採用で人材を充足する——その両方が揃って初めて、保育園は保育の質を高めることに集中できます。今回のM&Aは、その問いに対する、ひとつの具体的な答えでした。

株式譲渡という形態は、雇用・待遇・雇用契約をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアはそのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生

株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。

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