成長の踊り場を迎えた黒字SaaSが、
採用管理SaaSの顧客基盤を活用して新市場を開拓した、成長戦略型M&A

人材プラットフォームの「次の打ち手」を、成長戦略型M&Aで実現した1件。
メール送付からクロージング(SPA締結)まで、ミライアが伴走した全5フェーズの工程をご紹介します。

  • 読了時間約10分
  • 扱う業界人材 / IT
  • 扱う業種ハイレイヤー向け人材プラットフォーム / 採用管理SaaS
  • 組織規模10人以下
  • 最終更新2026年7月

ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの“事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、HRTech領域・成長志向の中小企業同士の事業譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までの3ヶ月、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。

ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に“何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。

この記事のおすすめ読者

  • 事業の“次の一手”として、譲渡を考えはじめている経営者の方
  • M&Aで事業を伸ばしていきたい、HRTech・SaaS企業の経営層の方
  • M&Aアドバイザーが「何を、どのフェーズで一緒にやってくれるのか」を知りたい方

ケース概要

本ケースは、HRTech領域の成長志向の中小企業同士による事業譲渡の事例です。ハイレイヤー向けプラットフォームを自社で育ててきた売り手側と、採用管理SaaSで業界内のシェアを伸ばす買い手側——両者にとって初めてのM&Aを、ミライアは橋渡し役として伴走しました。

クライアント概要(架空・モデルケース)


譲渡企業(売り手)

  • 株式会社A / 従業員8名 / ハイレイヤー向けプラットフォーム「TrustLink」を4年間運営。
  • 導入企業約120社、黒字化済み。

譲渡企業(売り手)課題感

  • 黒字化したが、次の成長カーブが描けない
  • 新規事業との並行でリソース分散
  • 資金調達と集中の両立が必要

譲受企業(買い手)

  • 株式会社B / 従業員60名 / 採用管理SaaS「Connect ATS」を約2,500社に提供。
  • 選考プロセスの機能拡張を構想。

譲受企業(買い手)課題感

  • リファレンス領域の単独立ち上げは投資効率悪 
  • 良いパートナーをM&Aで取り込みたい
  • ATSと連動する体験品質向上を見込みたい

取引形態

  • 事業譲渡(「TrustLink」事業を株式会社Aから株式会社Bへ譲渡)

ミライアの役割

  • 譲渡企業側のM&Aアドバイザリー。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。

プロセスの全体像

ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで合計3ヶ月、その後の引き渡しまで含めると約4ヶ月のプロセスとなりました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ

売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。

キックオフ・ヒアリング
  • まず株式会社A代表との1on1から始めました。サービスへの想い、4年間の運営で築いてきた手触り、譲渡を考えた背景、譲渡後にやりたいこと——金額の話の前に、「譲渡したあとに、何が起きてほしいのか」を、時間をかけて伺いました。ヒアリングの結果は「ナラティブ・シート」としてまとめ、後続の候補先マッチングや条件交渉の場で、都度立ち戻れる土台にしました。
候補先のマッチングと初回ご提案
  • ナラティブ・シートで言語化された「譲渡後の理想」を軸に、ミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。HRTech領域に深く入り込んでいるからこそ描けるシナジー仮説——“プロダクト統合の絵姿”、“クロスセル可能な顧客接点”、“技術スタックの補完”——を立てたうえで、財務指標だけでなく、ミッションの重なりや組織カルチャーの相性も重視して、数社をご提案しました。そのなかで株式会社Bとの初回オンライン面談を設定。サービスの説明よりも、互いのミッションについて語る時間を、意識的に長く取りました。
NDAの締結
  • 初回面談で代表の意向や事業の強みを理解できたため、資料を提供いただく前提としてNDAを締結(機密保持契約)しました。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走をはじめます。

Phase 2. 事前準備フェーズ

売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。

企業価値の算定
  • DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、事業価値レンジを算定。売り手の代表とは「数字の前提」をすべて開示したうえですり合わせ、売り手が納得できる価格レンジを共通言語にしました。価格は希望ではなく、買手を想定してすり合わせる——これがミライアのスタンスです。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
  • 買い手候補に開示する案件資料(IM)は、ミライアが作成します。事業モデル、顧客ポートフォリオ、ユニットエコノミクス、リスク要因まで、買い手の検討に必要な論点を網羅する形で構成しました。売り手の方々が日常業務を止めずに準備を進められるよう、ドラフトはこちらから提示し、レビューを重ねるスタイルで進めました。

Phase 3. 打診・初期検討フェーズ

買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。

NDA締結と情報開示
  • 株式会社B側に対し、ミライアがNDA(秘密保持契約)を締結。NDA締結後、IMを開示しました。情報開示の範囲とタイミングは売り手と毎回確認し、必要な情報を、必要なタイミングで届ける運用にしました。
関心の確認とフィードバック整理
  • 株式会社B側の初期検討の論点(プロダクトの統合難易度、既存ユーザー基盤の引き継ぎ、技術スタックの違い)を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で揃えることで、検討の停滞を防ぎました。

Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ

トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。

トップ面談のセッティングと同席
  • 両者の経営トップによる面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを用意し、ミライアも同席。論点の整理と、発言の翻訳役を担いました。価格よりも先に、譲渡後の引き継ぎ体制や、サービスの未来像について話す時間を、意識的に長く取りました。
条件交渉と論点整理
  • 譲渡価格、譲渡範囲(資産・契約・人員)、引き継ぎ期間、譲渡後のサポート体制、競業避止——論点ごとにメモを起こし、両社が“同じ画面を見ながら”議論できる場を整えました。事前に立てたシナジー仮説が共通言語になっていたため、価格や条件の落としどころも、感情論ではなく“未来の絵姿”を起点に握れたのが、このフェーズの大きな手応えでした。意見が割れた論点は、その場で握りにいかず、一度持ち帰って整理することで、意思決定の質を保ちました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金の仲介
  • 条件がおおむね固まった段階で、基本合意書(LOI)のドラフトをミライアが作成。買い手に独占交渉権が付与され、買い手からは中間金(成功報酬の10%、最終的に成功報酬と相殺)のお支払い手続きを、ミライアが仲介しました。

Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ

デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。

DDの調整と専門家連携
  • 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。買い手側の顧問税理士・弁護士の方々と日程・範囲・優先順位を調整し、売り手の業務負荷を抑える形で、並行して進めました。
SPAの論点整理
  • DD結果を踏まえ、最終契約書の論点を整理。表明保証の範囲、補償の上限と期間、契約解除事由など、売り手・買い手 双方のリスク分配を可視化したうえで、両社が納得できる落としどころを、一緒に探りました。
クロージング立会いと引き渡し
  • 最終契約締結と決済の当日も、ミライアは両社に同席。引き渡しが完了するまで、隣にいます——これは私たちが大切にしているスタンスです。譲渡後の業務引き継ぎも約2ヶ月かけて段階的に進め、譲渡から4ヶ月後には、新サービス「TrustConnect」として正式提供が始まりました。

結び

成長志向の中小企業同士のM&Aは、これまで「上場企業やスタートアップがやるもの」というイメージで語られがちでした。けれど、本ケースのように、売り手はリソースの集中と資金調達、買い手はマルチプロダクト化——それぞれの“次の一手”として、十分に成立します。

ミライアが大切にしているのは、両者の思想に丁寧に向き合うこと。そしてフェーズごとに、必要な実行を、確実に積み上げていくこと。本記事のフェーズ構造は、私たちが実際に伴走している、そのままのプロセスです。

波江田 茂生

株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。

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