ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの”事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、採用ブランディングと組織コンサルティングという、「企業と人の関係を最大化する」という共通軸を持ちながらも異なるケイパビリティを持つ企業同士の株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までのプロセスを、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。
ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に”何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。
この記事のおすすめ読者
- 採用ブランディング事業の支援領域を入社後の組織開発まで拡充したいと考えている経営者の方
- M&AによってSaaS採用ブランディング機能を強化し、組織コンサルとの一体提供を実現したいと考えている企業の経営層の方
- 採用ブランディング力と組織コンサルという異なるケイパビリティが、M&Aでどのようなシナジーを生むかを知りたい方
ケース概要
本ケースは、採用ブランディングや採用サイト制作・採用広報戦略に強みを持つ専門会社と、組織開発・人事制度構築・エンゲージメント向上支援を展開するコンサルティング会社による株式譲渡の事例です。採用フェーズへの支援実績は豊富ながらも入社後の組織開発や人事制度設計まで支援できないことに課題を抱えていた売り手側と、組織開発の実績は豊富ながらも採用ブランディング領域のサービス拡充が課題だった買い手側——両社の課題が鏡合わせのように補完し合う形で、今回のM&Aは実現しました。
クライアント概要(架空・モデルケース)
譲渡企業(売り手)
- 株式会社A / 従業員約40名 / 採用ブランディング事業を運営。
- 採用コンセプト設計・採用サイト制作・採用広報コンテンツ制作・採用SNS運用まで、企業の採用ブランディングを一貫して支援。
譲渡企業(売り手)課題感
- 採用ブランディングと採用サイト制作の実績は豊富だが、採用した人材が入社後に活躍・定着するための組織開発や人事制度設計には関与できていない
- 顧客から「せっかく採用しても定着しない」「入社後のオンボーディングを整えたい」という相談が増えているが、対応できていない
- 入社後の組織開発まで一貫して支援できるパートナーと組むことで、採用から定着・活躍まで顧客に向き合える体制を作りたい
譲受企業(買い手)
- 株式会社B / 従業員約220名 / 組織コンサルティング事業を展開。
- 組織開発・人事制度構築・マネジメント強化・エンゲージメントサーベイ・1on1支援まで幅広い人事・組織課題を支援。
譲受企業(買い手)課題感
- 組織開発と人事制度構築の実績は豊富だが、採用ブランディングの観点からの支援ができていない
- 顧客の採用課題——「自社の魅力をうまく伝えられていない」「採用サイトが古くなっている」——に対応できず、採用フェーズの支援が手薄になっている
- 採用ブランディング機能をM&Aで取り込み、採用から組織定着まで一気通貫で支援できる体制を作りたい
取引形態
- 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)
ミライアの役割
- 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。
プロセスの全体像
ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで約6ヶ月のプロセスとなりました。
本件の特徴は、シナジーの流れが採用から定着という人材マネジメントの全体像と完全に一致していた点です。採用ブランディングで優秀な人材を引きつけ、入社後の組織開発と人事制度で定着・活躍を支える——人材に関わる課題をフルカバーできる体制の価値が、顧客にとって明確に大きく、6ヶ月という期間での成約を後押ししました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ
売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。
株式会社B(買い手)からの依頼
- 今回のプロセスは、買い手である株式会社B側からのご相談を起点に始まりました。
- 組織コンサルティングで220名規模まで成長してきた株式会社Bは、組織開発と人事制度構築に強みを持つ一方で、採用フェーズへの関与が弱いことへの課題意識を高めていました。顧客の経営者や人事責任者から「組織を整えても、そもそも採用で自社の魅力が伝わっていない」「採用サイトや採用広報から一緒に見直したい」という相談が増える中、採用ブランディングのサービスを持たないまま対応できないケースが続いていました。「採用ブランディング機能をM&Aで取り込み、採用から組織定着まで一気通貫で支援できる体制を作りたい」——それが今回の依頼の核心でした。
- ミライアはこのご相談を受け、候補先の選定に着手。採用ブランディング・組織コンサル領域への深い理解を元に、採用ブランディングの実績・採用サイト制作の品質・採用広報への対応力・チームの安定性を軸に複数社をリストアップするなかで、株式会社Aが要件に合致すると判断し、打診へと進みました。
キックオフ・ヒアリング
- 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「なぜ採用ブランディングという領域を選んだのか」「企業の採用活動にどんな変化をもたらしたかったのか」「譲渡後も採用ブランディングの現場に関わり続けたいか」——代表が積み上げてきたノウハウとチームへの敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
- 買い手である株式会社B側からは、「組織コンサル顧客に対して採用ブランディングをそのまま提供できるチームを取り込みたい」というオーダーをすでに受けていました。そのため株式会社A代表のヒアリングでは、制作実績や対応媒体の幅だけでなく、「このチームが組織コンサルの文脈で採用ブランディングを設計できるか」という視点を、最初の仕事と位置づけていました。
- 採用ブランディング事業において、サイトデザインや広報コンテンツの品質だけでなく、企業のカルチャーと採用したい人物像を深く理解したうえでブランドを設計できる力そのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先の選定
- 成長戦略シートをもとに、株式会社B含めミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「採用ブランディングチームが加わることで、組織コンサル顧客に提供できる価値がどう広がるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、採用ブランディングの実績・組織コンサルとの思想の親和性・チーム文化の一致を重視して複数社をご提案しました。
NDA・アドバイザリー契約の締結
- 初回面談で代表の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。
Phase 2. 事前準備フェーズ
売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。
企業価値の算定
- DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。採用ブランディング事業の評価では、顧客単価・リピート率・対応可能な支援領域の幅・採用サイト制作の実績数・広報コンテンツの制作キャパシティがキー項目になります。「組織開発まで支援できなかった」という売り手の課題は逆に、買い手の組織コンサル体制と組み合わせることで採用から定着まで一気通貫の提案が可能になり、顧客単価と継続率が大幅に改善できるシナジーとして評価される要因にもなります。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
- 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。チームのスキル構成と対応可能な支援領域・業種、過去案件のプロファイルと顧客規模の分布、売上構造とリピート率の推移、制作実績のポートフォリオ概要、リスク要因まで、採用ブランディング事業の文脈で読める構成にしました。売り手側の日常業務を止めないよう、ドラフトをこちらから提示し、レビューを重ねる進め方で仕上げました。
Phase 3. 打診・初期検討フェーズ
買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。
NDA・アドバイザリー締結と情報開示
- 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。顧客企業の採用戦略や制作中のブランディング資料は特に機密性が高いため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
- 株式会社B側の初期検討における論点——「採用ブランディングチームの継続意向は買収後も維持されるか」「組織コンサルタントと採用ブランディングチームが協働する際の提案フローはどう設計するか」「採用ブランディングと組織コンサルを一体で提案する際のサービスパッケージはどう設計するか」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。
Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ
トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。
トップ面談のセッティングと同席
- 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「採用ブランディング事業が企業と求職者の出会いにどんな価値を届けてきたか」と「組織コンサル会社が企業と従業員の関係に実現したい組織の姿」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
- 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、採用ブランディングチームの待遇水準の維持・代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が”同じ前提で”議論できる場を整えました。
- 採用ブランディングと組織コンサルを統合した際のサービス設計については、両社が最も具体的な議論を要した論点でした。「採用ブランディングから入って組織開発に広げるのか、組織開発から入って採用ブランディングを提案するのか」——顧客接点の入り口と提案の順序を設計したことで、統合後のサービスモデルの解像度が上がり、価格評価の根拠を双方が明確に共有できたことが、合意形成をはやめる大きな手応えとなりました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
- 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。
Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ
デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。
DDの調整と専門家連携
- 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務・未払い残業代・過去の制作物の著作権帰属処理状況・顧客との支援契約の条件等、採用ブランディング事業特有のリスク確認に特に注力しました。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
- DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
- 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、スムーズな引き継ぎを経て、株式会社Bの組織コンサル顧客への採用ブランディング支援の統合提案が開始。約3ヶ月後には、採用ブランディングの設計から組織開発・人事制度構築まで一気通貫で担う新体制での正式稼働が始まりました。
結び
採用と組織開発が別々の会社によって支援されてきたという構造は、人事領域全体に長年染みついた慣習です。採用ブランディングで期待値を高めた候補者が入社後に感じるギャップ、そのギャップを生む組織文化や制度の問題——それらは本来、切り離して解決できる課題ではありません。採用で伝えた企業像と入社後の体験を一致させることこそが、定着率と組織力を高める本質であるという認識が、人事業界全体で広まりつつあります。採用から組織開発までをワンストップで支援するこのモデルは、その認識を体制として実現した先行例として、同様の課題を持つ企業が参照できる答えでもあります。今回のM&Aは、その流れを一歩先取りした、ひとつの具体的な実践でした。
株式譲渡という形態は、雇用・待遇・雇用契約をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアはそのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生
株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。
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