システム開発機能を持たないデジタル広告代理店が、
システム開発会社の開発力を活用し、
マーケティングDX支援へ進化した、成長戦略型M&A

デジタル広告代理店の「次の打ち手」を、成長戦略型M&Aで実現した1件。
メール送付からクロージング(SPA締結)まで、ミライアが伴走した全5フェーズの工程をご紹介します。

  • 読了時間約10分
  • 扱う業界広告 / IT
  • 扱う業種デジタル広告代理店 / システム開発
  • 組織規模51〜100人
  • 最終更新2026年7月

ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの”事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、デジタル広告代理店とシステム開発という、「企業の事業成長をデジタルで支える」という共通軸を持ちながらも異なるケイパビリティを持つ企業同士の株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までのプロセスを、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。

ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に”何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。

この記事のおすすめ読者

  • デジタル広告・マーケティング事業のシステム開発機能の強化や提供領域の拡大を模索している経営者の方
  • M&AによってマーケティングDX支援領域に参入したいシステム開発会社の経営層の方
  • マーケティング戦略力とシステム開発力という異なるケイパビリティが、M&Aでどう統合されるかを知りたい方

ケース概要

本ケースは、デジタル広告運用とマーケティング戦略立案に強みを持つ広告代理店と、業務システムやWebアプリケーション開発を全国で展開するシステム開発会社による株式譲渡の事例です。広告運用の実績は高いながらもマーケティングシステムの開発機能を持てないことに課題を抱えていた売り手側と、高い技術力を持ちながらもマーケティング支援領域への事業拡大が課題だった買い手側——両社の課題が鏡合わせのように補完し合う形で、今回のM&Aは実現しました。

クライアント概要(架空・モデルケース)


譲渡企業(売り手)

  • 株式会社A / 従業員約90名 / デジタル広告代理店事業を運営。
  • リスティング広告・ディスプレイ広告・SNS広告の運用に加え、マーケティング戦略立案・データ分析支援を法人向けに提供。

譲渡企業(売り手)課題感

  • 広告運用実績とマーケティング戦略立案の質は高く、顧客からの評価も高い
  • 顧客から「広告運用と連動したシステム開発も一緒にやってほしい」という相談が増えているが、開発機能を持たず対応できていない
  • マーケティングシステムの開発力を持つパートナーと組むことで、データ活用と施策実行をより深く統合した支援を実現したい

譲受企業(買い手)

  • 株式会社B / 従業員約420名 / システム開発事業を全国展開。
  • 業務システム・Webアプリ・基幹システム開発を幅広く手がけ、高い開発技術力を持つ。

譲受企業(買い手)課題感

  • システム開発の技術力と実績は豊富だが、マーケティング支援領域への展開ができておらず事業拡大の機会を逃している
  • 顧客のDX推進の中でマーケティングシステムの需要が高まっているが、マーケティングノウハウがないため提案できていない
  • デジタルマーケティングのノウハウを持つ企業をM&Aで取り込み、マーケティングDX支援を新たな事業柱に育てたい

取引形態

  • 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)

ミライアの役割

  • 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。

プロセスの全体像

ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで約9ヶ月のプロセスとなりました。

本件の特徴は、両社のケイパビリティが補完し合うだけでなく、統合後に生まれる「マーケティングDX支援」という新しい市場の大きさが、双方の経営者を前向きにさせた点です。広告運用データとシステム開発を連携させることで、顧客のマーケティング基盤そのものを設計・構築できる——そのサービスの可能性が、9ヶ月に及ぶ交渉を諦めずに進め続けた原動力となりました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ

売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。

株式会社B(買い手)からの依頼
  • 今回のプロセスは、買い手である株式会社B側からのご相談を起点に始まりました。
  • 全国420名体制でシステム開発事業を展開してきた株式会社Bは、顧客のDX推進案件が増える中で、マーケティング領域のシステム開発需要が高まっていることを肌で感じていました。しかし、マーケティングの知識やノウハウが社内にないまま提案を試みても、顧客の本質的な課題に応えられないケースが続いていました。「デジタルマーケティングの知見と実績を持つ会社をM&Aで取り込み、システム開発とマーケティング支援を掛け合わせたマーケティングDX支援を新しい事業の柱にしたい」——それが今回の依頼の核心でした。
  • ミライアはこのご相談を受け、候補先の選定に着手。マーケティング・デジタル領域への深い理解を元に、広告運用実績・マーケティング戦略立案力・データ活用のノウハウ・チームの安定性を軸に複数社をリストアップするなかで、株式会社Aが要件に合致すると判断し、打診へと進みました。
キックオフ・ヒアリング
  • 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「なぜデジタル広告代理店という事業を選んだのか」「広告運用を通じて顧客の事業にどんな変化をもたらしたかったのか」「譲渡後もマーケティングの現場に関わり続けたいか」——代表が積み上げてきたノウハウとチームへの敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
  • 買い手である株式会社B側からは、「システム開発の顧客に対してマーケティング戦略とデータ活用の支援をそのまま提供できるチームを取り込みたい」というオーダーをすでに受けていました。そのため株式会社A代表のヒアリングでは、広告運用の実績だけでなく、「このチームがシステム開発と連携したマーケティング基盤の設計に参画できるか」という視点を、最初の仕事と位置づけていました。
  • デジタル広告代理店事業において、媒体ごとの運用スキルだけでなく、顧客の事業データを読み解いてマーケティング戦略全体を設計できる思考力そのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先の選定
  • 成長戦略シートをもとに、株式会社B含めミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「デジタルマーケティングチームが加わることで、システム開発会社の顧客に提供できる価値がどう広がるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、マーケティングとシステムの統合思想の親和性・顧客層の重なり・チーム文化の一致を重視して複数社をご提案。
NDA・アドバイザリー契約の締結
  • 初回面談で代表の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。

Phase 2. 事前準備フェーズ

売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。

企業価値の算定
  • DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。デジタル広告代理店モデルの評価では、管理広告費の総額・顧客単価・リピート率・マーケティング戦略案件の比率・担当者一人あたりの稼働効率がキー項目になります。「システム開発機能を持てなかった」という売り手の課題は逆に、買い手の開発力と組み合わせることでマーケティングシステムの設計・構築まで一気通貫で提案できるようになり、案件単価と提供価値が大幅に拡大できるシナジーとして評価される要因にもなります。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
  • 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。チームのスキル構成と対応可能な広告媒体・マーケティング支援領域、主要クライアントの業種分布、管理広告費と売上の推移、マーケティング戦略案件の構成比、リスク要因まで、デジタル広告代理店事業の文脈で読める構成にしました。売り手側の日常業務を止めないよう、ドラフトをこちらから提示し、レビューを重ねる進め方で仕上げました。

Phase 3. 打診・初期検討フェーズ

買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。

NDA・アドバイザリー締結と情報開示
  • 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。顧客企業名や広告運用データ・マーケティング戦略の詳細は特に機密性が高いため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
  • 株式会社B側の初期検討における論点——「マーケティング担当者の継続意向は買収後も維持されるか」「広告運用チームとシステム開発チームが協働する際の提案・実行フローはどう設計するか」「マーケティングDX支援という新しいサービスの市場をどう開拓していくか」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。

Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ

トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。

トップ面談のセッティングと同席
  • 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「デジタル広告代理店が顧客の事業成長に貢献しようとしてきた方法」と「システム開発会社が顧客のDXに実現したい変化の全体像」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
  • 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、マーケティング担当者の待遇水準の維持・代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が”同じ前提で”議論できる場を整えました。
  • 本件は成約まで約9ヶ月を要しましたが、その多くは統合後の新サービス「マーケティングDX支援」の事業計画と価格評価のすり合わせに費やされました。既存事業の延長としての評価に加え、統合後に生まれる新市場の価値をどう織り込むか——シナジー仮説を何度も具体化しながら双方が納得できる着地点を探ったことが、最終的な合意を可能にしました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
  • 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。

Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ

デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。

DDの調整と専門家連携
  • 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務・未払い残業代・進行中の広告運用契約の条件・媒体アカウントの権利帰属・顧客データの取り扱い体制等、デジタル広告代理店事業特有のリスク確認に特に注力しました。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
  • DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
  • 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、スムーズな引き継ぎを経て、マーケティング戦略とシステム開発を組み合わせた統合提案の提供が開始。約4ヶ月後には、マーケティングDX支援を新たな事業領域として正式に立ち上げ、新体制での稼働が始まりました。

結び

デジタル広告代理店 × システム開発会社という組み合わせは、「マーケティングとエンジニアリング、異なる世界の二社」に見えるかもしれません。けれど、両社が共通して向き合っていたのは「顧客の事業成長を、デジタルの力で最大化すること」でした。どれだけ精緻なマーケティング戦略を立てても、それを実行するシステム基盤がなければ成果は限定される。どれだけ優れたシステムを開発しても、マーケティングの文脈がなければ顧客の事業には根付かない。その両方を一社で担える体制が、今回のM&Aで初めて実現しました。

株式譲渡という形態は、雇用・待遇・雇用契約をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアはそのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生

株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。

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