「営業をかけるのではなく、
M&Aで大手販路を手に入れる」——グラフィック領域への進出を狙うWEBマーケティング会社が、
180名の広告代理店を迎え入れた、成長戦略型M&A

クリエイティブ制作の単価に悩む広告代理店が、WEBマーケティング会社の大手販路とデジタル領域を活用し、オフライン×オンラインの統合提案体制を築いた、成長戦略型M&A
広告代理店の「次の打ち手」を、成長戦略型M&Aで実現した1件。 メール送付からクロージング(SPA締結)まで、ミライアが伴走した全5フェーズの工程をご紹介します。

  • 読了時間約10分
  • 扱う業界広告 / Web
  • 扱う業種広告代理店 / WEBマーケティング
  • 組織規模100人以上
  • 最終更新2026年7月

ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの”事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、グラフィック・紙媒体・映像企画などクリエイティブ制作全般を手がける広告代理店と、デジタル広告運用・SEO・SNSマーケティングを手がけるWEBマーケティング会社という、「顧客のブランド価値と集客を支える」という共通軸を持ちながらも異なるケイパビリティを持つ企業同士の株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までのプロセスを、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。

ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に”何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。

この記事のおすすめ読者

  • クリエイティブ制作事業の単価改善や、WEB領域への進出を模索している広告代理店経営者の方
  • 大手企業への販路拡大や、グラフィック・紙媒体領域への進出を検討しているWEBマーケティング会社の経営層の方
  • オフラインのクリエイティブ制作力とオンラインのマーケティング力が、M&Aでどう統合されるかを知りたい方

ケース概要

本ケースは、グラフィックデザイン・紙媒体・映像企画など、クリエイティブ制作全般を手がける広告代理店と、デジタル広告運用・SEO・SNSマーケティングを全国で展開するWEBマーケティング会社による株式譲渡の事例です。制作実績とクリエイティブ力を持ちながらも単価の伸び悩みとWEB領域への進出に課題を抱えていた売り手側と、デジタル領域には強いものの大手企業への販路とグラフィック領域への進出が課題だった買い手側——両社の課題が鏡合わせのように補完し合う形で、今回のM&Aは実現しました。

クライアント概要(架空・モデルケース)


譲渡企業(売り手)

  • 株式会社A / 従業員約180名 / 広告代理店事業を運営。
  • グラフィックデザイン・紙媒体広告・映像企画など、クリエイティブ制作全般を大手・中堅企業向けに提供。

譲渡企業(売り手)課題感

  • 制作実績とクリエイティブ力には自信があるが、案件単価が制作物の点数ベースで決まりやすく、継続的な単価向上が難しい
  • WEB広告・SNSマーケティングなどデジタル領域への引き合いが増えているが、自社にノウハウがなく提案の幅が広がらない
  • オフラインのクリエイティブとオンラインのマーケティングを一体で提案できる体制を作りたい

譲受企業(買い手)

  • 株式会社B / 従業員約500名 / WEBマーケティング事業を全国展開。
  • デジタル広告運用・SEO・SNSマーケティング・CRM施策など、WEB領域のマーケティング支援を提供。

譲受企業(買い手)課題感

  • デジタル領域では実績があるが、大手企業への直接的な販路が乏しく、既存クライアントの多くが中堅・中小企業にとどまっている
  • グラフィックデザインや紙媒体・映像制作などオフラインのクリエイティブ領域への進出を検討しているが、制作体制もノウハウも自社にはない
  • 大手企業に対して、オンライン・オフラインを横断した統合提案ができる体制を作りたい

取引形態

  • 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)

ミライアの役割

  • 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。

プロセスの全体像

ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで約8ヶ月のプロセスとなりました。

本件の特徴は、シナジーの双方向性が明確だった点です。株式会社Aのクリエイティブ制作力に株式会社BのWEBマーケティングを組み合わせることで単価の高いオンライン・オフライン統合提案が可能になる一方、株式会社Bは株式会社Aが築いてきた大手企業との取引関係を通じて販路を拡大できる——その双方向のシナジーが、8ヶ月というやや腰を据えたプロセスの中で丁寧に磨き込まれ、成約へとつながりました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ

売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。

株式会社B(買い手)からの依頼
  • 今回のプロセスは、買い手である株式会社B側からのご相談を起点に始まりました。
  • 全国500名体制でWEBマーケティング事業を展開してきた株式会社Bは、デジタル領域での実績には自信がある一方、大手企業への直接的な販路が乏しく、既存クライアントの多くが中堅・中小企業にとどまっているという構造的な課題を感じていました。またグラフィックデザインや紙媒体・映像制作などオフラインのクリエイティブ領域への進出も検討していましたが、制作体制もノウハウも自社にはありませんでした。「大手企業への販路と、クリエイティブ制作の体制をまとまった形で取り込みたい」——それが今回の依頼の核心でした。
  • ミライアはこのご相談を受け、候補先の選定に着手。広告・クリエイティブ領域への深い理解を元に、制作実績・取引先企業の規模と業種分布・クリエイティブディレクション体制・チームの安定性を軸に複数社をリストアップするなかで、株式会社Aが要件に合致すると判断し、打診へと進みました。
キックオフ・ヒアリング
  • 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「なぜクリエイティブ制作という事業を選んだのか」「単価が上がらない構造にどんな場面で限界を感じてきたか」「譲渡後も制作の現場に関わり続けたいか」——代表が積み上げてきた制作へのこだわりとチームへの敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
  • 買い手である株式会社B側からは、「大手企業との取引実績と、クリエイティブ制作の体制を取り込みたい」というオーダーをすでに受けていました。そのため株式会社A代表のヒアリングでは、制作実績や単価だけでなく、「このチームがWEBマーケティングとの連携にどれだけ前向きか」という視点を、最初の仕事と位置づけていました。
  • 広告代理店事業において、クリエイティブの引き出しの多さと、長年培ってきた大手企業との信頼関係そのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先の選定
  • 成長戦略シートをもとに、株式会社B含めミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「クリエイティブ制作力が加わることで、WEBマーケティング会社が提供できる価値がどう広がるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、取引先企業の規模・クリエイティブの方向性・チーム文化の親和性を重視して複数社をご提案。
NDA・アドバイザリー契約の締結
  • 初回面談で代表の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。

Phase 2. 事前準備フェーズ

売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。

企業価値の算定
  • DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。広告代理店(クリエイティブ制作)モデルの評価では、制作案件数・平均単価・取引先の継続率・大手企業との取引実績・クリエイティブディレクターの体制がキー項目になります。「制作物の点数ベースで単価が上がらなかった」という売り手の課題は逆に、買い手のWEBマーケティングと組み合わせることで統合提案による単価向上が見込めるシナジーとして評価される要因にもなります。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
  • 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。クリエイティブ制作の実績と得意領域、取引先企業の業種・規模分布、案件単価と受注件数の推移、クリエイティブディレクション体制、リスク要因まで、広告代理店事業の文脈で読める構成にしました。売り手側の日常業務を止めないよう、ドラフトをこちらから提示し、レビューを重ねる進め方で仕上げました。

Phase 3. 打診・初期検討フェーズ

買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。

NDA・アドバイザリー締結と情報開示
  • 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。取引先企業名や案件単価の情報は特に機密性が高いため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
  • 株式会社B側の初期検討における論点——「クリエイティブディレクターの継続意向は買収後も維持されるか」「WEBマーケティングとの連携提案はどのタイミングから開始できるか」「大手取引先との既存契約は買収後どう引き継がれるか」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を月次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。

Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ

トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。

トップ面談のセッティングと同席
  • 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「広告代理店が積み重ねてきたクリエイティブへのこだわり」と「WEBマーケティング会社が目指すデジタルとオフラインの統合提案の姿」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
  • 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、クリエイティブディレクター・制作スタッフの待遇水準の維持・代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が”同じ前提で”議論できる場を整えました。
  • 大手取引先との既存契約の引き継ぎについては、最も慎重な整理が必要だった論点でした。株式会社Aが複数の大手企業と継続的な取引関係を結んでいた中で、買収後にどの取引先へWEBマーケティングを併せて提案していくか、また取引先ごとの発注担当者との関係性をどう維持するかを、双方の営業責任者を交えて時間をかけて設計したことが、8ヶ月という期間でも後続のDD・SPA交渉を安定して展開させた要因となりました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
  • 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。

Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ

デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。

DDの調整と専門家連携
  • 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務・未払い残業代・進行中の制作案件の契約条件・大手取引先との契約内容・著作権や制作物の権利帰属等、広告代理店事業特有のリスク確認に特に注力しました。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
  • DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
  • 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、スムーズな引き継ぎを経て、株式会社Aの大手取引先へ株式会社BのWEBマーケティングを組み合わせた提案が開始。約3ヶ月後には、クリエイティブ制作からデジタル運用まで一気通貫で担う新体制での正式稼働が始まりました。

結び

広告代理店 × WEBマーケティング会社という組み合わせは、「オフラインとオンライン、得意領域の異なる二社」に見えるかもしれません。けれど、両社が共通して向き合っていたのは「顧客のブランドと集客を、媒体を問わず最大化すること」でした。どれだけ優れたクリエイティブを作っても、デジタルでの拡散設計がなければ効果は限定的になる。どれだけデジタル運用に長けていても、大手企業への信頼と販路がなければ提案の入口に立てない。その両方を一社で担える体制が、今回のM&Aで初めて実現しました。

株式譲渡という形態は、雇用・待遇・雇用契約をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアはそのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生

株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。

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