ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの”事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、コンテンツマーケティングとPRという、「企業のメッセージを届ける」という共通軸を持ちながらも異なるケイパビリティを持つ企業同士の株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までのプロセスを、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。
ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に”何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。
この記事のおすすめ読者
- コンテンツマーケティング事業のサービス拡充やPR領域への展開を模索している経営者の方
- M&AによってデジタルコンテンツSaaS制作機能を強化し、PRとコンテンツを一体で提供したいと考えている企業の経営層の方
- コンテンツ制作力とPR戦略力という異なるケイパビリティが、M&Aでどのようなシナジーを生むかを知りたい方
ケース概要
本ケースは、オウンドメディア運営や記事・ホワイトペーパー制作などコンテンツマーケティングに強みを持つ専門会社と、企業の広報・PR戦略を幅広く支援するPR会社による株式譲渡の事例です。BtoB企業への豊富な支援実績を持ちながらも認知拡大やメディアリレーションまで一貫した支援ができないことに課題を抱えていた売り手側と、大手企業との取引実績は豊富ながらもデジタルコンテンツ制作機能の強化が課題だった買い手側——両社の課題が鏡合わせのように補完し合う形で、今回のM&Aは実現しました。
クライアント概要(架空・モデルケース)
譲渡企業(売り手)
- 株式会社A / 従業員約40名 / コンテンツマーケティング事業を運営。
- オウンドメディアの立ち上げ・記事制作・ホワイトペーパー・事例インタビューなどBtoB企業向けのコンテンツ制作と運用を一貫して支援。
譲渡企業(売り手)課題感
- コンテンツ制作と運用の品質には自信があるが、制作したコンテンツを外部メディアへの露出や認知拡大につなげる手段を持っていない
- 顧客から「記事を作るだけでなく、もっと広く認知を取りたい」という要望が増えているが、PRやメディアリレーションのノウハウがない
- 広報・PRの文脈からコンテンツを位置づけられるパートナーと組むことで、より大きな価値を顧客に届けたい
譲受企業(買い手)
- 株式会社B / 従業員約180名 / 広報・PR支援事業を展開。
- プレスリリース配信・メディアリレーションズ・広報戦略立案・危機対応PRまで大手企業を中心に幅広く支援。
譲受企業(買い手)課題感
- メディア露出やプレスリリースの支援は得意だが、デジタル上でのコンテンツ制作・オウンドメディア運用の機能が社内に不足している
- 顧客から「PRと連動したコンテンツも一緒に作ってほしい」という相談が増えているが、対応できていない
- コンテンツマーケティング機能をM&Aで取り込み、PRとデジタルコンテンツを一体で提供できる体制を作りたい
取引形態
- 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)
ミライアの役割
- 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。
プロセスの全体像
ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで約6ヶ月のプロセスとなりました。
本件の特徴は、シナジーの双方向性と顧客基盤の重なりが明確だった点です。株式会社BのPR顧客はデジタルコンテンツを必要としており、株式会社AのコンテンツチームはそのままPR文脈での制作を担える。一方、株式会社AのBtoB顧客はPRによる認知拡大を求めており、株式会社BのメディアネットワークがそのままPR支援に応えられる——その双方向のシナジーが、6ヶ月という期間での成約を後押ししました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ
売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。
株式会社B(買い手)からの依頼
- 今回のプロセスは、買い手である株式会社B側からのご相談を起点に始まりました。
- 広報・PR支援で180名規模まで成長してきた株式会社Bは、メディアリレーションズとプレスリリース戦略に強みを持つ一方で、デジタル上でのコンテンツ制作機能を持てていないことへの課題意識を高めていました。大手企業の広報担当者から「PRと連動したオウンドメディアのコンテンツも一緒に管理してほしい」「ホワイトペーパーや事例記事もまとめてお願いしたい」という要望が増える中、対応できないまま他社に流れるケースが続いていました。「コンテンツマーケティング機能をM&Aで取り込み、PRとデジタルコンテンツを一体で提供できる体制を作りたい」——それが今回の依頼の核心でした。
- ミライアはこのご相談を受け、候補先の選定に着手。コンテンツマーケティング・PR領域への深い理解を元に、BtoBコンテンツ制作の品質・対応可能なコンテンツ種別の幅・PR文脈への親和性・チームの安定性を軸に複数社をリストアップするなかで、株式会社Aが要件に合致すると判断し、打診へと進みました。
キックオフ・ヒアリング
- 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「なぜBtoBのコンテンツマーケティングに特化しようと思ったのか」「コンテンツを通じてどんな顧客の変化を見てきたか」「譲渡後もコンテンツ制作の現場に関わり続けたいか」——代表が積み上げてきた制作ノウハウとチームへの敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
- 買い手である株式会社B側からは、「PR顧客に対してデジタルコンテンツの制作・運用をそのまま提供できるチームを取り込みたい」というオーダーをすでに受けていました。そのため株式会社A代表のヒアリングでは、記事の制作本数や運用実績だけでなく、「このチームが広報・PRの文脈でコンテンツの役割を理解したうえで制作できるか」という視点を、最初の仕事と位置づけていました。
- コンテンツマーケティング事業において、文章力やSEOスキルだけでなく、企業のメッセージとターゲット読者の課題を深く理解したうえでコンテンツの設計から運用まで一貫して担える力そのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先の選定
- 成長戦略シートをもとに、株式会社B含めミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「コンテンツマーケティングチームが加わることで、PR顧客に提供できる価値がどう広がるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、BtoBコンテンツの制作実績・PR文脈との親和性・チーム文化の一致を重視して複数社をご提案しました。
NDA・アドバイザリー契約の締結
- 初回面談で代表の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。
Phase 2. 事前準備フェーズ
売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。
企業価値の算定
- DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。コンテンツマーケティング事業の評価では、顧客単価・リピート率・対応可能なコンテンツ種別の幅・担当者一人あたりの稼働効率・BtoB特化の専門性がキー項目になります。「メディアリレーションまで一貫支援できなかった」という売り手の課題は逆に、買い手のPRネットワークと組み合わせることでコンテンツと露出を一体で提案できるようになり、顧客単価と継続率が大幅に改善できるシナジーとして評価される要因にもなります。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
- 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。チームのスキル構成と対応可能なコンテンツ種別・業種、過去案件のプロファイルと顧客規模の分布、売上構造とリピート率の推移、リスク要因まで、コンテンツマーケティング事業の文脈で読める構成にしました。売り手側の日常業務を止めないよう、ドラフトをこちらから提示し、レビューを重ねる進め方で仕上げました。
Phase 3. 打診・初期検討フェーズ
買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。
NDA・アドバイザリー締結と情報開示
- 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。顧客企業名や制作中のコンテンツの詳細は特に機密性が高いため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
- 株式会社B側の初期検討における論点——「コンテンツ制作チームの継続意向は買収後も維持されるか」「PRディレクターとコンテンツライター・エディターが協働する際の業務設計はどう行うか」「既存のコンテンツマーケティング顧客との契約は株式譲渡後も自動的に引き継げるか」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。
Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ
トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。
トップ面談のセッティングと同席
- 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「コンテンツマーケティング事業が企業のメッセージ発信に届けてきた価値」と「PR会社が企業ブランドに実現したい認知と信頼の全体像」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
- 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、コンテンツ制作チームの待遇水準の維持・代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が”同じ前提で”議論できる場を整えました。
- PRディレクターとコンテンツライター・エディターの協働体制の設計については、両社が最も具体的な議論を要した論点でした。メディア露出を主軸に動くPRの思考と、読者の課題解決を主軸に動くコンテンツの思考は、優先順位が異なる場面があります。「どちらを主軸にどんなプロジェクト設計をするか」を早期に議論したことが、統合後のチーム運営への安心感を生み、合意形成をはやめる大きな手応えとなりました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
- 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。
Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ
デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。
DDの調整と専門家連携
- 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務・未払い残業代・過去の制作案件における著作権帰属の処理状況・進行中案件の契約条件等、コンテンツマーケティング事業特有のリスク確認に特に注力しました。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
- DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
- 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、スムーズな引き継ぎを経て、株式会社BのPR顧客へのコンテンツマーケティング支援の統合提案が開始。約3ヶ月後には、PR戦略の立案からデジタルコンテンツの制作・運用まで一気通貫で担う新体制での正式稼働が始まりました。
結び
PRとコンテンツマーケティングは、長らく「広報の仕事」と「マーケティングの仕事」として別々に語られてきました。しかし企業が情報発信に求めるものが多様化し、メディア露出とオウンドメディアの境界が曖昧になっていく中で、PRとコンテンツを分断したまま支援することへの限界は、業界全体で意識されはじめています。プレスリリースで話題を作り、オウンドメディアでその文脈を深め、読者を顧客へと育てる——その一連の流れを一社で担うモデルへの移行は、情報過多の時代における企業コミュニケーションの必然的な進化でもあります。今回のM&Aは、その流れを先取りした、業界が参照できる一つの答えでもありました。
株式譲渡という形態は、雇用・待遇・雇用契約をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアはそのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生
株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。
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