採用収益に依存する医療人材紹介会社が、
電子カルテシステムの全国顧客基盤を活用し、
収益源を多様化した、成長戦略型M&A

医療人材紹介会社の「次の打ち手」を、成長戦略型M&Aで実現した1件。
メール送付からクロージング(SPA締結)まで、ミライアが伴走した全5フェーズの工程をご紹介します。

  • 読了時間約10分
  • 扱う業界人材 / IT
  • 扱う業種医療人材紹介 / 電子カルテ
  • 組織規模10人以下
  • 最終更新2026年7月

ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの”事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、医療人材紹介と電子カルテシステムという、「医療機関の課題を支える」という共通軸を持ちながらも異なるケイパビリティを持つ企業同士の株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までのプロセスを、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。

ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に”何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。

この記事のおすすめ読者

  • 医療人材紹介事業の収益多様化や医療機関との関係深耕を模索している経営者の方
  • M&Aによって医療機関向けのサービス領域を拡充し、病院経営支援を強化したいと考えている企業の経営層の方
  • 医療人材ネットワークとシステム提供力という異なるケイパビリティが、M&Aでどのようなシナジーを生むかを知りたい方

ケース概要

本ケースは、医師・看護師・医療専門職の紹介に特化した医療人材紹介会社と、電子カルテシステムを全国の医療機関に提供する企業による株式譲渡の事例です。医療機関との強固なネットワークを持ちながらも採用以外の収益源が少ないことに課題を抱えていた売り手側と、全国に高いシェアを持ちながらも病院経営支援サービスの拡充が課題だった買い手側——両社の課題が鏡合わせのように補完し合う形で、今回のM&Aは実現しました。

クライアント概要(架空・モデルケース)


譲渡企業(売り手)

  • 株式会社A / 従業員約5名 / 医療人材紹介事業を運営。
  • 医師・看護師・薬剤師・医療事務など幅広い医療専門職の紹介に特化し、全国の医療機関と深い信頼関係を構築。

譲渡企業(売り手)課題感

  • 医療機関との信頼関係と人材紹介ネットワークは豊富だが、成功報酬型の収益構造に依存しており収益が安定しない
  • 採用決定以外のサービスを持たないため、医療機関との関係を深めても収益多様化につながらない
  • 医療機関が抱える採用以外の経営課題にも応えられるサービスを持つパートナーと組み、継続的な関係を深めたい

譲受企業(買い手)

  • 株式会社B / 従業員約310名 / 電子カルテシステム事業を展開。
  • クラウド型電子カルテを全国のクリニック・病院・介護施設に提供し、高いシェアを有する。

譲受企業(買い手)課題感

  • 電子カルテの導入実績とシェアは高いが、システム提供以外の病院経営支援サービスが不足している
  • 電子カルテ顧客から「スタッフ採用にも困っている」という声が多く、採用支援への需要は明確にある
  • 医療人材紹介のノウハウとネットワークを持つ会社をM&Aで取り込み、病院経営支援の幅を広げたい

取引形態

  • 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)

ミライアの役割

  • 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。

プロセスの全体像

ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで約6ヶ月のプロセスとなりました。

本件の特徴は、シナジーの即効性と顧客基盤の重なりが明確だった点です。株式会社Bの電子カルテ顧客はすでに採用支援を必要としており、株式会社Aの人材紹介ネットワークはその需要にそのまま応えられる。さらに、株式会社Aが持つ医療機関との信頼関係は、株式会社Bにとって電子カルテの横展開を加速させる新たな営業接点にもなる——その双方向の価値が、6ヶ月という期間での成約を後押ししました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ

売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。

株式会社B(買い手)からの依頼
  • 今回のプロセスは、買い手である株式会社B側からのご相談を起点に始まりました。
  • 電子カルテシステムで310名規模まで成長してきた株式会社Bは、全国の医療機関に高いシェアを持つ一方で、システム提供にとどまらない病院経営支援への拡張を構想していました。電子カルテの導入後、顧客の院長や事務長から「良いスタッフが採用できない」という相談を受けることが増えていたにもかかわらず、採用支援のサービスを持たないため対応できないでいました。「医療人材紹介のノウハウと医療機関ネットワークをM&Aで取り込み、電子カルテと人材支援を一体で提供できる体制を作りたい」——それが今回の依頼の核心でした。
  • ミライアはこのご相談を受け、候補先の選定に着手。医療・HRtech領域への深い理解を元に、医療専門職の紹介実績・医療機関ネットワークの質と広がり・対応可能な職種の幅・チームの安定性を軸に複数社をリストアップするなかで、株式会社Aが要件に合致すると判断し、打診へと進みました。
キックオフ・ヒアリング
  • 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「なぜ医療人材の紹介に特化しようと思ったのか」「医療機関との信頼関係をどうやって築いてきたか」「譲渡後も医療現場の採用支援に関わり続けたいか」——代表が少人数で積み上げてきた医療機関との信頼とネットワークへの敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
  • 買い手である株式会社B側からは、「電子カルテ顧客に対して採用支援をそのまま提供できる医療人材紹介チームを取り込みたい」というオーダーをすでに受けていました。そのため株式会社A代表のヒアリングでは、紹介実績の数だけでなく、「このチームが医療機関の経営課題を理解したうえで採用提案ができるか」という視点を、最初の仕事と位置づけていました。
  • 医療人材紹介事業において、職種別の紹介スキルだけでなく、医療機関それぞれの診療科・経営規模・地域特性を理解したうえで最適な人材を提案できる力そのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先の選定
  • 成長戦略シートをもとに、株式会社B含めミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「医療人材紹介チームが加わることで、電子カルテ顧客の医療機関に提供できる価値がどう広がるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、顧客層の重なり・医療機関への向き合い方の親和性・チーム文化の一致を重視して複数社をご提案。
NDA・アドバイザリー契約の締結
  • 初回面談で代表の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。

Phase 2. 事前準備フェーズ

売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。

企業価値の算定
  • DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。医療人材紹介事業の評価では、年間紹介決定数・平均手数料単価・取引医療機関数・対応可能な職種の幅・エージェントの医療業界知識の深さがキー項目になります。5名という小規模ながら、「医療機関との強固な信頼関係」という資産は、大規模な企業が単独で構築するには長い時間を要するものであり、M&Aによる獲得価値として高く評価される要因になります。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
  • 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。エージェントのスキル構成と対応可能な職種・地域、取引医療機関のプロファイル(診療科・規模・地域)、年間紹介決定数と売上の推移、リスク要因まで、医療人材紹介事業の文脈で読める構成にしました。医療機関の情報は機密性が高いため、匿名化の範囲を売り手と丁寧に確認しながら仕上げました。

Phase 3. 打診・初期検討フェーズ

買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。

NDA・アドバイザリー締結と情報開示
  • 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。医療機関名や医療職の個人情報・採用条件の詳細は特に機密性が高いため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
  • 株式会社B側の初期検討における論点——「医療機関との関係は代表個人への依存度が高くないか」「職業紹介事業の許可証は引き継げるか」「電子カルテ顧客と人材紹介顧客が重なる医療機関において、情報管理のルールはどう整理するか」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。

Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ

トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。

トップ面談のセッティングと同席
  • 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「医療人材紹介事業が医療機関にどんな採用支援を届けてきたか」と「電子カルテ会社が医療機関の経営に実現したいデジタル化と支援の全体像」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
  • 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が”同じ前提で”議論できる場を整えました。
  • 電子カルテと人材紹介という二つのサービスを同一の医療機関に提供する際の情報管理については、医療情報の機密性が特に高いことから、最も法的整理を要した論点でした。「電子カルテの運用情報と採用候補者の個人情報を完全に分離して管理する体制」を弁護士と連携して早期に設計したことが、合意形成をはやめる大きな手応えとなりました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
  • 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。

Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ

デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。

DDの調整と専門家連携
  • 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務・未払い残業代・職業紹介事業の許可証の有効性・医療機関との取引契約条件・候補者データの個人情報管理体制等、医療人材紹介事業特有のリスク確認に特に注力しました。医療情報に隣接した個人情報を扱う事業であることから、個人情報保護法および医療情報システムの安全管理ガイドラインとの整合性も確認しました。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
  • DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
  • 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、スムーズな引き継ぎを経て、株式会社Bの電子カルテ顧客への医療人材紹介の統合提案が開始。約3ヶ月後には、電子カルテの導入支援から採用活動の支援まで一気通貫で担う病院経営支援の新体制での正式稼働が始まりました。

結び

顧客が本当に求めているのは、電子カルテでも人材紹介でもなく、その先にある「医療機関が、システムと人材の両方で、より良い医療を提供できること」です。業務効率化を支えるシステムと、現場を支える医療人材——その両方を一社から受けられる体制が、今回のM&Aで初めて実現しました。

株式譲渡という形態は、雇用・待遇・雇用契約をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアはそのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生

株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。

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