大学への販路拡大に悩む教育SaaSが、
新卒人材紹介の大学ネットワークを活用し、
導入校数を伸ばした、成長戦略型M&A

教育SaaSの「次の打ち手」を、成長戦略型M&Aで実現した1件。
メール送付からクロージング(SPA締結)まで、ミライアが伴走した全5フェーズの工程をご紹介します。

  • 読了時間約10分
  • 扱う業界IT / 人材
  • 扱う業種大学向け教育SaaS / 新卒人材紹介
  • 組織規模11〜50人
  • 最終更新2026年7月

ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの”事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、大学向け教育SaaSと新卒人材紹介という、一見異なる業種でありながら「学生の未来」という共通軸を持つ企業同士の株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までのプロセスを、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。

ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に”何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。

この記事のおすすめ読者

  • 教育SaaSの販路拡大や大学との接点強化を模索している経営者の方
  • M&Aによって就活前の学生との接点を早期に獲得したい人材紹介企業の経営層の方
  • 教育とHRという異なる領域が、M&Aでどのようなシナジーを生むかを知りたい方

ケース概要

本ケースは、大学向けの教育SaaSを展開するスタートアップと、新卒採用支援に強みを持つ大手人材紹介企業による株式譲渡の事例です。プロダクトの質に自信を持ちながらも大学への販路拡大に課題を抱えていた売り手側と、就活解禁前から学生と接点を持つ手段を探していた買い手側——両社の戦略的な意図が重なり合う形で、今回のM&Aは実現しました。

クライアント概要(架空・モデルケース)


譲渡企業(売り手)

  • 株式会社A / 従業員約20名 / 大学向け教育SaaSを開発・運営。
  • キャリア教育・学習管理・就職支援機能を統合したプラットフォームを提供。

譲渡企業(売り手)課題感

  • プロダクトの完成度は高いが、大学への営業リソースが不足しており導入校数が伸び悩んでいる
  • 大学との契約交渉には時間がかかり、販路開拓のペースが事業計画に追いつかない
  • 単独での成長に限界を感じており、強力な販路を持つパートナーとの連携を模索していた

譲受企業(買い手)

  • 株式会社B / 従業員約1,000名 / 新卒向け人材紹介事業を全国展開。
  • 企業と学生双方に幅広いネットワークを持ち、新卒採用支援で高い実績を誇る。

譲受企業(買い手)課題感

  • 新卒紹介の競争が激化する中、就活解禁後の接触では他社との差別化が難しくなっている
  • 学生が就活を意識し始める在学中の早い段階から接点を持ちたいが、そのチャネルがない
  • 大学との関係構築を単独で進めるには、時間・コスト・ノウハウのすべてが不足している

取引形態

  • 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)

ミライアの役割

  • 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。

プロセスの全体像

ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで約4ヶ月のプロセスとなりました。

本件の特徴は、シナジーの構造がシンプルかつ強力だった点です。株式会社Aが持つ大学との導入実績・プロダクト・学生データのパイプラインを、株式会社Bの新卒紹介ネットワークと組み合わせることで、就活前の学生との早期接点という、業界全体が求めていた課題を一気に解決できる——その構想が、両社の対話を加速させる原動力となりました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ

売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。

株式会社B(買い手)からの依頼
  • 今回のプロセスは、買い手である株式会社B側からのご相談を起点に始まりました。
  • 新卒人材紹介で業界トップクラスの実績を誇る株式会社Bは、近年の競争激化を受けて、就活解禁後の接触だけでは他社との差別化が難しくなっているという課題を抱えていました。「学生が就活を意識し始める前の段階、つまり在学中から自然な形で接点を持てるチャネルが欲しい」——その答えとして浮かび上がったのが、大学に導入されているキャリア教育プラットフォームでした。大学と学生の双方に信頼されるプロダクトを持つ企業をM&Aで取り込むことで、就活前の学生との早期接点を一気に獲得したい——それが今回の依頼の核心でした。
  • ミライアはこのご相談を受け、候補先の選定に着手。教育・HRtech領域への深い理解を元に、大学への導入実績・プロダクトの完成度・学生との接点の質を軸に複数社をリストアップするなかで、株式会社Aが要件に合致すると判断し、打診へと進みました。
キックオフ・ヒアリング
  • 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「なぜ大学向けのプロダクトを作ろうと思ったのか」「学生やキャリア支援に対してどんな思いを持っているか」「譲渡後もプロダクトに関わり続けたいか」——代表が築いてきたプロダクトと大学との信頼関係への敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
  • 買い手である株式会社B側からは、「在学中の学生と大学を通じて自然に接点を持てるプラットフォームを取り込みたい」というオーダーをすでに受けていました。そのため株式会社A代表のヒアリングでは、機能仕様や導入校数だけでなく、「このプロダクトが大学や学生から信頼されている理由」を丁寧に引き出すことを、最初の仕事と位置づけていました。
  • 教育SaaS事業において、プロダクトの機能だけでなく、大学の担当者・教員・学生それぞれとの信頼関係そのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先のマッチングと初回ご提案
  • 成長戦略シートをもとに、株式会社B含めミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「大学向け教育SaaSを持つことで、就活前の学生との接点がどう広がるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、大学ネットワークの補完性・学生へのアプローチ思想の親和性・プロダクト文化との相性を重視して複数社をご提案。その中で株式会社Bとの初回面談を実施しました。
NDA・アドバイザリー契約の締結
  • 初回面談で代表の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。

Phase 2. 事前準備フェーズ

売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。

企業価値の算定
  • DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。教育SaaSモデルの評価では、導入大学数・学生ユーザー数・契約継続率・ARR(年間経常収益)の安定性がキー項目になります。「販路拡大が課題だった」という売り手の状況は逆に、買い手の大学・学生ネットワークに乗ることで導入校数が急拡大できるシナジーとして評価される要因にもなります。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
  • 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。導入大学のプロファイル・学生ユーザー数・プロダクトの機能構成・ARRと解約率の推移・開発ロードマップ・リスク要因まで、教育SaaSモデルの文脈で読める構成にしました。売り手側の日常業務を止めないよう、ドラフトをこちらから提示し、レビューを重ねる進め方で仕上げました。

Phase 3. 打診・初期検討フェーズ

買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。

NDA・アドバイザリー締結と情報開示
  • 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。導入大学名や学生の利用データは特に機密性が高いため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
  • 株式会社B側の初期検討における論点——「大学との契約関係は株式譲渡後も自動的に引き継がれるか」「プロダクト開発チームの継続意向は確保されているか」「学生データの取り扱いは個人情報保護法上の問題がないか」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。

Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ

トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。

トップ面談のセッティングと同席
  • 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「教育SaaS事業が学生に提供しようとしていたもの」と「人材紹介企業が学生のキャリアにどう向き合いたいか」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
  • 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、開発チームの待遇水準の維持・代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が”同じ前提で”議論できる場を整えました。
  • 学生データや大学との契約関係の取り扱いについては、教育・個人情報保護の観点から法的整理に最も時間を要した論点でした。大学側への通知・同意取得の要否、学生データの利用目的の範囲——これらを弁護士と連携して早期に整理したことで、買い手側の懸念を解消し、条件交渉をスムーズに進めることができました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
  • 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。

Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ

デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。

DDの調整と専門家連携
  • 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務・未払い残業代・大学との契約条件・学生データの個人情報管理体制等、教育SaaS事業特有のリスク確認に特に注力しました。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
  • DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
  • 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、スムーズな引き継ぎを経て、株式会社Bの新卒紹介ネットワークを通じた大学への展開が開始。約3ヶ月後には、在学中の学生との接点を軸にした新たなキャリア支援体制での正式稼働が始まりました。

結び

教育SaaS × 新卒人材紹介という組み合わせは、「学校と就職、別々の話」に見えるかもしれません。けれど、両社が共通して向き合っていたのは「学生が自分のキャリアを、より早く・より深く考え始められる環境を作ること」でした。在学中から学生に寄り添うプロダクトと、就職後の入り口を支える人材紹介——その連続性の中にこそ、今回のM&Aが生み出した本質的な価値がありました。

株式譲渡という形態は、雇用・待遇・雇用契約をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアはそのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生

株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。

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