中途採用市場で戦うのをやめたAI受託開発会社が、SES企業ごと技術者を迎え入れ、
単価も人材も同時に解決した、成長戦略型M&A

単価が上がらないSES企業が、AI受託開発会社の技術者確保ニーズと組み合わさり、高付加価値領域への転換で単価改善を実現した、成長戦略型M&A
SES企業の「次の打ち手」を、成長戦略型M&Aで実現した1件。 メール送付からクロージング(SPA締結)まで、ミライアが伴走した全5フェーズの工程をご紹介します。

  • 読了時間約10分
  • 扱う業界IT / IT
  • 扱う業種SES事業 / AI受託開発
  • 組織規模100人以上
  • 最終更新2026年7月

ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの”事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、技術者派遣・常駐開発を担うSES企業と、AI領域の受託開発を手がける企業という、「エンジニアリソースを軸にした事業」という共通軸を持ちながらも異なるポジショニングを持つ企業同士の株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までのプロセスを、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。

ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に”何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。

この記事のおすすめ読者

  • SES事業の単価の伸び悩みや、高付加価値領域への転換を模索している経営者の方
  • AI受託開発の受注拡大に対して、技術者確保がボトルネックになっている経営層の方
  • エンジニアリソース型の事業同士が、M&Aでどう統合され単価改善につながるかを知りたい方

ケース概要

本ケースは、常駐型のシステムエンジニアリングサービス(SES)を展開する企業と、AI領域を専門とする受託開発企業による株式譲渡の事例です。多くの技術者を抱えながらも案件単価が伸び悩んでいた売り手側と、旺盛な受注に対して技術者確保が追いつかない買い手側——両社の課題が鏡合わせのように補完し合う形で、今回のM&Aは実現しました。

クライアント概要(架空・モデルケース)


譲渡企業(売り手)

  • 株式会社A / 従業員約120名 / SES事業を運営。
  • 上流工程から実装まで、常駐型でのシステムエンジニアリングサービスを大手SIer・事業会社向けに提供。

譲渡企業(売り手)課題感

  • 技術者数は十分に確保できているが、案件の多くが二次請け・三次請けの立場となり、単価が上がりにくい構造にある
  • 上流提案や技術選定に関与できる案件が少なく、技術者のスキルが単価に反映されにくい
  • AI・データ活用など、今後の市場で単価が伸びる領域に技術者をシフトさせたいが、自社単独では案件も知見も不足している

譲受企業(買い手)

  • 株式会社B / 従業員約300名 / AI受託開発事業を全国展開。
  • 生成AI活用支援、機械学習モデル開発、AIプロダクトの受託開発を、大手企業・スタートアップ向けに提供。

譲受企業(買い手)課題感

  • AI領域の引き合いは旺盛だが、優秀な技術者の採用が追いつかず、受注機会を逃すケースが増えている
  • 中途採用市場でのAI人材獲得競争が激化しており、採用コストが年々上昇している
  • 即戦力となる開発体制を、採用だけに頼らず確保する手段を模索している

取引形態

  • 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)

ミライアの役割

  • 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。

プロセスの全体像

ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで約6ヶ月のプロセスとなりました。

本件の特徴は、シナジーの双方向性が明確だった点です。株式会社Aの技術者が株式会社BのAI案件にアサインされることで単価の高い領域へシフトできる一方、株式会社Bは採用市場を介さずに120名規模の技術者基盤を確保できる——その双方向のシナジーが、6ヶ月という短期間での成約を可能にしました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ

売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。

株式会社B(買い手)からの依頼
  • 今回のプロセスは、買い手である株式会社B側からのご相談を起点に始まりました。
  • 全国300名体制でAI受託開発事業を展開してきた株式会社Bは、旺盛な受注に対して技術者採用が追いつかないという構造的な課題を感じていました。中途採用市場でのAI人材獲得競争は激しく、採用コストの上昇と採用リードタイムの長期化が、受注拡大の足かせになっていました。「採用市場に頼らず、即戦力となる技術者基盤をまとまった形で確保したい。同時に、技術者のスキルシフトを支援できる体制を社内に持ちたい」——それが今回の依頼の核心でした。
  • ミライアはこのご相談を受け、候補先の選定に着手。IT・エンジニアリング領域への深い理解を元に、技術者数・技術者の平均年齢とスキルレンジ・稼働率・離職率を軸に複数社をリストアップするなかで、株式会社Aが要件に合致すると判断し、打診へと進みました。
キックオフ・ヒアリング
  • 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「なぜSES事業という事業を選んだのか」「単価が上がらない構造にどんな場面で限界を感じてきたか」「譲渡後も技術者のキャリア形成に関わり続けたいか」——代表が積み上げてきた技術者育成の姿勢とチームへの敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
  • 買い手である株式会社B側からは、「即戦力となる技術者基盤と、常駐案件で鍛えられた現場対応力を取り込みたい」というオーダーをすでに受けていました。そのため株式会社A代表のヒアリングでは、技術者数や稼働率だけでなく、「このチームがAI領域の技術習得にどれだけ前向きか」という視点を、最初の仕事と位置づけていました。
  • SES事業において、常駐先で培われる現場対応力や技術の幅広さそのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先の選定
  • 成長戦略シートをもとに、株式会社B含めミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「技術者基盤が加わることで、AI受託開発会社が提供できる価値がどう広がるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、技術者のスキルレンジ・稼働状況・チーム文化の親和性を重視して複数社をご提案。
NDA・アドバイザリー契約の締結
  • 初回面談で代表の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。

Phase 2. 事前準備フェーズ

売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。

企業価値の算定
  • DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。SES事業モデルの評価では、稼働技術者数・平均単価・稼働率・契約継続率・離職率がキー項目になります。「二次請け・三次請けが中心で単価が上がらなかった」という売り手の課題は逆に、買い手のAI案件に技術者をシフトすることで単価が底上げされるシナジーとして評価される要因にもなります。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
  • 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。技術者のスキル構成と保有資格、常駐先企業の業種分布、稼働率と単価の推移、離職率と定着施策、リスク要因まで、SES事業の文脈で読める構成にしました。売り手側の日常業務を止めないよう、ドラフトをこちらから提示し、レビューを重ねる進め方で仕上げました。

Phase 3. 打診・初期検討フェーズ

買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。

NDA・アドバイザリー締結と情報開示
  • 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。常駐先企業名や個々の技術者の稼働情報は特に機密性が高いため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
  • 株式会社B側の初期検討における論点——「技術者の継続意向は買収後も維持されるか」「AI領域への技術シフトにどの程度の期間・研修が必要か」「既存の常駐契約は買収後どのタイミングで整理・移行できるか」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。

Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ

トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。

トップ面談のセッティングと同席
  • 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「SES企業が技術者一人ひとりのキャリアに込めてきた思い」と「AI受託開発会社が技術者に提供したい成長機会」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
  • 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、技術者の待遇水準の維持・代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が”同じ前提で”議論できる場を整えました。
  • 既存の常駐契約先との関係整理については、最も実務的な整理が必要だった論点でした。株式会社Aが複数のSIer・事業会社と常駐契約を結んでいた中で、買収後にどの案件を継続し、どの技術者をAI案件へシフトしていくかの移行計画を、双方の現場責任者を交えて早期に設計したことが、後続のDD・SPA交渉をスムーズに展開させました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
  • 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。

Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ

デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。

DDの調整と専門家連携
  • 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務・未払い残業代・進行中の常駐契約の条件・技術者との雇用契約内容・偽装請負リスクの有無等、SES事業特有のリスク確認に特に注力しました。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
  • DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
  • 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、スムーズな引き継ぎを経て、株式会社Aの技術者の一部がAI案件へ段階的にアサインされる体制がスタート。約3ヶ月後には、常駐開発とAI受託開発を横断した技術者配置により、案件単価の改善傾向が見え始めました。

結び

SES企業 × AI受託開発企業という組み合わせは、「常駐と受託、契約形態の異なる二社」に見えるかもしれません。けれど、両社が共通して向き合っていたのは「技術者一人ひとりの力を、正当な単価に転換すること」でした。どれだけ多くの技術者を抱えていても、案件の立ち位置が単価を決めてしまう。どれだけ旺盛な受注があっても、技術者が確保できなければ案件を受けられない。その両方を一社で担える体制が、今回のM&Aで初めて実現しました。

株式譲渡という形態は、雇用・待遇・雇用契約をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアはそのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生

株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。

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