「採用でも自社開発でもなく、
M&Aで新領域に進出する」——PCキッティング市場を狙うSES会社が、
200名の人材派遣会社を迎え入れた、成長戦略型M&A

単価が上がらないホワイトカラー人材派遣会社が、SES会社のPCキッティング領域への進出ニーズと組み合わさり、単価構造とサービスラインを同時に強化した、成長戦略型M&A
ホワイトカラー人材派遣会社の「次の打ち手」を、成長戦略型M&Aで実現した1件。 メール送付からクロージング(SPA締結)まで、ミライアが伴走した全5フェーズの工程をご紹介します。

  • 読了時間約10分
  • 扱う業界人材 / IT
  • 扱う業種人材派遣 / SES
  • 組織規模100人以上
  • 最終更新2026年7月

ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの”事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、一般事務・アシスタント系のホワイトカラー人材派遣を担う企業と、技術者派遣・常駐開発を担うSES企業という、「人材を企業に送り出す」という共通軸を持ちながらも異なるポジショニングを持つ企業同士の株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までのプロセスを、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。

ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に”何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。

この記事のおすすめ読者

  • ホワイトカラー人材派遣事業の単価の伸び悩みや、サービスラインの拡張を模索している経営者の方
  • SES事業の人材確保や、新規事業領域への進出を検討している経営層の方
  • 人材派遣型の事業同士が、M&Aでどう統合され単価改善と事業多角化につながるかを知りたい方

ケース概要

本ケースは、一般事務・アシスタント業務を中心としたホワイトカラー人材派遣を展開する企業と、技術者派遣・常駐開発を全国で手がけるSES企業による株式譲渡の事例です。派遣人材数は確保できているものの単価が伸び悩んでいた売り手側と、優秀な人材確保に課題を抱えつつPCキッティングなどのホワイトカラー系人材派遣領域への進出を模索していた買い手側——両社の課題が鏡合わせのように補完し合う形で、今回のM&Aは実現しました。

クライアント概要(架空・モデルケース)


譲渡企業(売り手)

  • 株式会社A / 従業員約200名 / ホワイトカラー人材派遣事業を運営。
  • 一般事務・経理事務・アシスタント業務を中心に、大手企業向けに派遣人材を提供。

譲渡企業(売り手)課題感

  • 派遣人材数は安定的に確保できているが、一般事務・アシスタント派遣は単価の上限が低く、利益率の改善が難しい構造にある
  • 派遣先企業からの評価は高いものの、より単価の高い領域への展開余地が自社単独では見えていない
  • IT・技術系の人材派遣と組み合わせることで、派遣先企業への提案の幅を広げたいが、ノウハウが不足している

譲受企業(買い手)

  • 株式会社B / 従業員約800名 / SES事業を全国展開。
  • 上流工程から実装まで、常駐型でのシステムエンジニアリングサービスを大手SIer・事業会社向けに提供。

譲受企業(買い手)課題感

  • 優秀な技術者の確保が年々難しくなっており、採用競争の激化とともに採用コストが上昇している
  • PCキッティングやヘルプデスクなど、技術者ほど専門性を要しないホワイトカラー系の人材派遣領域への進出を検討しているが、営業ノウハウやコーディネーター体制を自社では持っていない
  • 既存の常駐先企業に対して、技術者派遣と一般事務派遣を併せて提案できれば、顧客単価と関係の深さを高められると考えている

取引形態

  • 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)

ミライアの役割

  • 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。

プロセスの全体像

ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで約6ヶ月のプロセスとなりました。

本件の特徴は、シナジーの双方向性が明確だった点です。株式会社Aの派遣人材が株式会社BのPCキッティング・ヘルプデスク案件へ展開されることで単価の高い領域へシフトできる一方、株式会社Bは自社で一から立ち上げるより早く、ホワイトカラー系人材派遣への進出と派遣コーディネーターの体制確保を同時に実現できる——その双方向のシナジーが、6ヶ月という短期間での成約を可能にしました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ

売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。

株式会社B(買い手)からの依頼
  • 今回のプロセスは、買い手である株式会社B側からのご相談を起点に始まりました。
  • 全国800名体制でSES事業を展開してきた株式会社Bは、優秀な技術者の確保が年々難しくなっているという構造的な課題を感じていました。同時に、PCキッティングやヘルプデスクなど、技術者ほど専門性を要しないホワイトカラー系の人材派遣領域への進出も検討していましたが、営業ノウハウやコーディネーター体制を自社では持ち合わせていませんでした。「技術者確保の間口を広げると同時に、ホワイトカラー系人材派遣のノウハウと体制をまとまった形で取り込みたい」——それが今回の依頼の核心でした。
  • ミライアはこのご相談を受け、候補先の選定に着手。人材・IT領域への深い理解を元に、派遣人材数・派遣先企業の業種分布・コーディネーター体制・定着率を軸に複数社をリストアップするなかで、株式会社Aが要件に合致すると判断し、打診へと進みました。
キックオフ・ヒアリング
  • 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「なぜホワイトカラー人材派遣事業という事業を選んだのか」「単価が上がらない構造にどんな場面で限界を感じてきたか」「譲渡後も派遣スタッフのキャリア支援に関わり続けたいか」——代表が積み上げてきた派遣人材の育成姿勢とチームへの敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
  • 買い手である株式会社B側からは、「即戦力となるコーディネーター体制と、一般事務・アシスタント業務で培われた派遣先企業との関係性を取り込みたい」というオーダーをすでに受けていました。そのため株式会社A代表のヒアリングでは、派遣人材数や単価だけでなく、「このチームがPCキッティングなどのIT関連業務にどれだけ前向きか」という視点を、最初の仕事と位置づけていました。
  • ホワイトカラー人材派遣事業において、派遣先企業との継続的な信頼関係やコーディネーターの調整力そのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先の選定
  • 成長戦略シートをもとに、株式会社B含めミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「派遣人材基盤とコーディネーター体制が加わることで、SES会社が提供できる価値がどう広がるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、派遣先企業層の重なり・コーディネーター体制・チーム文化の親和性を重視して複数社をご提案。
NDA・アドバイザリー契約の締結
  • 初回面談で代表の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。

Phase 2. 事前準備フェーズ

売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。

企業価値の算定
  • DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。ホワイトカラー人材派遣事業モデルの評価では、稼働派遣人材数・平均単価・派遣先継続率・コーディネーター一人当たりの管理人数・離職率がキー項目になります。「一般事務・アシスタント派遣中心で単価が上がらなかった」という売り手の課題は逆に、買い手のPCキッティング・ヘルプデスク案件と組み合わせることで単価が底上げされるシナジーとして評価される要因にもなります。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
  • 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。派遣人材のスキル構成と業務分野、派遣先企業の業種分布、稼働率と単価の推移、コーディネーター体制、リスク要因まで、ホワイトカラー人材派遣事業の文脈で読める構成にしました。売り手側の日常業務を止めないよう、ドラフトをこちらから提示し、レビューを重ねる進め方で仕上げました。

Phase 3. 打診・初期検討フェーズ

買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。

NDA・アドバイザリー締結と情報開示
  • 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。派遣先企業名や個々の派遣スタッフの稼働情報は特に機密性が高いため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
  • 株式会社B側の初期検討における論点——「コーディネーターの継続意向は買収後も維持されるか」「PCキッティング・ヘルプデスク領域への展開にどの程度の期間・研修が必要か」「既存の派遣契約は買収後どのタイミングで整理・移行できるか」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。

Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ

トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。

トップ面談のセッティングと同席
  • 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「ホワイトカラー人材派遣会社が派遣スタッフ一人ひとりのキャリアに込めてきた思い」と「SES会社が新領域で実現したい事業の広がり」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
  • 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、派遣スタッフ・コーディネーターの待遇水準の維持・代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が”同じ前提で”議論できる場を整えました。
  • 既存の派遣先企業との契約整理については、最も実務的な整理が必要だった論点でした。株式会社Aが複数の企業と派遣契約を結んでいた中で、買収後にどの契約を継続し、どの派遣先にPCキッティングなどの新サービスを提案していくかの展開計画を、双方の営業責任者を交えて早期に設計したことが、後続のDD・SPA交渉をスムーズに展開させました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
  • 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。

Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ

デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。

DDの調整と専門家連携
  • 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務・未払い残業代・進行中の派遣契約の条件・派遣スタッフとの雇用契約内容・労働者派遣法上のリスクの有無等、人材派遣事業特有のリスク確認に特に注力しました。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
  • DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
  • 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、スムーズな引き継ぎを経て、株式会社Aのコーディネーター体制を活かした派遣先企業への提案が開始。約3ヶ月後には、既存の派遣先企業に対してPCキッティング・ヘルプデスクを組み合わせた提案が実を結び始め、案件単価の改善傾向が見え始めました。

結び

ホワイトカラー人材派遣会社 × SES会社という組み合わせは、「一般事務と技術者、扱う人材の異なる二社」に見えるかもしれません。けれど、両社が共通して向き合っていたのは「派遣先企業に、より広い価値を届けること」でした。どれだけ多くの派遣人材を抱えていても、単価の上限が低い領域では利益を伸ばせない。どれだけ優秀な技術者を確保していても、隣接領域への進出ノウハウがなければ事業は広がらない。その両方を一社で担える体制が、今回のM&Aで初めて実現しました。

株式譲渡という形態は、雇用・待遇・雇用契約をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアはそのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生

株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。

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