リソース分散に悩む医療ITスタートアップが、
医療人材紹介の施設顧客基盤を活用し、
採用×業務システムへと事業領域を拡張した、成長戦略型M&A

医療ITスタートアップの「次の打ち手」を、成長戦略型M&Aで実現した1件。
メール送付からクロージング(SPA締結)まで、ミライアが伴走した全5フェーズの工程をご紹介します。

  • 読了時間約10分
  • 扱う業界IT / 人材
  • 扱う業種電子カルテ連携システム(医療IT) / 医療人材紹介
  • 組織規模11〜50人
  • 最終更新2026年7月

ミライアは「成長戦略型M&A」を軸に、売り手・買い手それぞれの“事業の続き”を、一緒に描いていく仕事をしています。本記事では、医療ITと医療人材という、隣接する2つの領域をまたいだ株式譲渡を、ミライアのフローに沿って紐解きます。初回接触から成約までの3ヶ月、各フェーズで実際に何を進めたのかを、モデルケースを通してご紹介します。

ミライアの強みは、4つに絞った対応領域への深い業界理解です。両者を組み合わせた時に“何が伸びるか”を、シナジー仮説として一緒に立てる。その仮説を軸に、候補のご提案から条件交渉までを、一貫してまとめていきます。

この記事のおすすめ読者

  • 医療ITや医療周辺サービスで、次の成長戦略を模索している経営者の方
  • M&Aによって顧客基盤や医療機関との接点を広げたい企業の経営層の方
  • 株式譲渡という手法が、事業譲渡とどう違うのかを知りたい方

ケース概要

本ケースは、医療IT領域の電子カルテ連携システムを手がけるスタートアップと、医療人材紹介を主軸とする中堅企業による株式譲渡の事例です。システム開発で培った医療機関とのリレーションを持つ売り手側と、医師・看護師の紹介ネットワークで全国展開を進める買い手側——両者にとって初めてのM&Aを、ミライアは橋渡し役として伴走しました。

クライアント概要(架空・モデルケース)


譲渡企業(売り手)

  • 株式会社A / 従業員12名 / 電子カルテ連携システム「MediLink」を5年間開発・運営。
  • 導入医療機関約80クリニック、黒字化済み。

課題感

  • 黒字化しているが、新規開発や営業に十分なリソースを割けていない
  • 並行して進めている遠隔医療支援ツールの開発が、チームの稼働を圧迫
  • 単独での資金調達より、パートナーとともに成長する道を探りたい

譲受企業(買い手)

  • 株式会社B / 従業員約1,000名 / 医師・看護師・医療事務の人材紹介「MediStaff」を全国展開。
  • 登録医療機関2,000施設超。

課題感

  • 人材紹介の接点は豊富だが、医療機関のオペレーション領域へのサービス展開ができていない
  • 電子カルテや業務システムとの連携を自社で開発する工数・ノウハウが不足
  • 既存顧客に対して、採用支援以外の価値を提供できるプロダクトが欲しい

取引形態

  • 株式譲渡(株式会社Aの全株式を株式会社Bが取得)

ミライアの役割

  • 売り手・買い手双方のM&A仲介。初回打診から最終契約まで一貫して伴走。

プロセスの全体像

ミライアは5つのフェーズ群にまとめ、それぞれで何を行うかを設計しています。本ケースでは初回接触から成約まで合計3ヶ月、その後の引き渡しまで含めると約4ヶ月のプロセスとなりました。

なお、今回は事業譲渡ではなく株式譲渡という形態を選択しました。既存の医療機関との契約関係や、審査・認定が紐づいた許認可をそのまま引き継ぐ必要があったためです。医療IT領域では、契約主体の変更が現場との関係に影響するケースも多く、法人格ごと移転する株式譲渡の方が、スムーズな引き継ぎに適していると判断しました。

Phase 1. 接触・契約フェーズ

売り手・買い手 双方の想いと事業をじっくり伺い、思想の重なりを確認したうえで、アドバイザリー契約を結びます。

株式会社B(買い手)からの依頼
  • 今回のプロセスは、売り手側からではなく、買い手である株式会社B側からのご相談を起点に始まりました。
  • 医療人材紹介「MediStaff」を全国約2,000施設に展開してきた株式会社Bは、事業の次のステージとして、医療機関の”オペレーション領域”への踏み込みを構想していました。人材採用の支援だけにとどまらず、医療機関の業務システムとも連携することで、より深いパートナーとして関わっていきたい——そうした思いをお持ちでした。
  • 一方で、電子カルテや業務システムとの連携を自社で開発するには、技術ノウハウの不足と投資効率の問題があり、単独での立ち上げは現実的ではないという判断に至っていました。「すでに現場で使われているプロダクトと、その背景にある医療機関との信頼関係ごと、M&Aで取り込みたい」——それが株式会社Bの依頼の核心でした。
  • ミライアはこのご相談を受け、アドバイザーとして、条件に合う候補先の選定に着手。医療機関への導入実績・継続率の高さ・開発チームの安定性を軸に複数社をリストアップするなかで、株式会社Aに対しての打診へと進みました。
キックオフ・ヒアリング
  • 株式会社A代表との最初の対話は、財務数値の整理よりも前に始めました。「MediLinkをなぜ作ったのか」「医療機関のどんな課題を解きたかったのか」「譲渡後も、サービスに関わり続けたいのか」——代表が5年かけて築いてきたものへの敬意を起点に、時間をかけて伺いました。ヒアリングの内容は「成長戦略シート」として整理し、後続のマッチングや条件交渉の場で、立ち戻れる土台として活用しました。
  • 買い手である株式会社B側からは、「医療機関との信頼関係ごと引き継げる相手を探している」というオーダーをすでに受けていました。だからこそ、株式会社A代表のヒアリングでは、プロダクトの機能よりも、5年間でどんな現場と、どんな関係を築いてきたのか——その文脈を丁寧に引き出すことを、最初の仕事と位置づけていました。
  • 医療ITという領域では、技術的な強みだけでなく、医療機関との信頼関係そのものが資産になります。売り手・買い手 双方の成長戦略が重なる部分を見つけることが、このフェーズでのミライアの役割でした。
候補先の選定
  • 成長戦略シートをもとに、ミライアの独自ネットワークから候補先を選定しました。「電子カルテ連携システムを持つことで、既存の医療機関顧客に何が提供できるか」というシナジー仮説を軸に、単なる財務的な相性ではなく、顧客接点・営業チャネル・サービス設計の補完性を重視して複数社をご提案。
NDA・アドバイザリー契約の締結
  • 初回面談で代表の意向と方向性を確認したうえで、ミライアとのNDA・アドバイザリー契約を締結。着手金はいただかないまま、ここから本格的な伴走を開始します。

Phase 2. 事前準備フェーズ

売り手側の事業の価値を言語化し、買い手検討に必要な情報を、一緒に整えていきます。

企業価値の算定
  • DCF法・類似企業比較法・直近の取引事例を組み合わせ、株式価値のレンジを算定。医療IT領域は、導入施設数・継続率・契約単価の安定性が評価に直結するため、MediLinkの解約率の低さと、医療機関との長期契約の実績を根拠として丁寧に組み立てました。数字の前提はすべて代表と共有し、「買い手がどう見るか」を念頭に置いた価格レンジを共通認識にしました。
IM(インフォメーション・メモランダム)の作成
  • 買い手候補への開示資料(IM)は、ミライアが主導して作成。システムのアーキテクチャ概要、導入施設の属性、売上構成とARR推移、開発ロードマップ、リスク要因まで、医療ITの文脈で読める構成にしました。売り手側の日常業務を止めないよう、ドラフトをこちらから提示し、レビューを重ねる進め方で仕上げました。

Phase 3. 打診・初期検討フェーズ

買い手候補への打診と情報開示を、リスクを抑えながら、一歩ずつ進めます。

NDA・アドバイザリー締結と情報開示
  • 株式会社B側とのNDA(秘密保持契約)・アドバイザリー契約をミライアが締結。その後、IMを段階的に開示しました。医療分野の情報は、患者データや医療機関名が間接的に含まれるケースもあるため、開示範囲と匿名化の判断は、売り手と毎回確認しながら進めました。
関心の確認とフィードバック整理
  • 株式会社B側の初期検討における論点——「電子カルテベンダーとのAPI契約は承継されるか」「導入医療機関との関係性はキーパーソン依存ではないか」「開発チームの残留意向は」——を整理し、売り手側にフィードバック。双方の温度感を週次で確認しながら、検討の停滞を防ぎました。

Phase 4. 交渉・基本合意フェーズ

トップ面談で互いの意思を確かめ、条件交渉を経て、基本合意(LOI)まで進みます。

トップ面談のセッティングと同席
  • 両社の経営トップによる対面での面談を、ミライアがセッティング。当日はアジェンダを事前に共有し、ミライアも同席しました。価格交渉の前に、「MediLinkが向かおうとしていた場所」と「MediStaffが医療機関に提供したい未来」を語り合う時間を先に設けたことで、両代表の間に共通の文脈が生まれました。
条件交渉と論点整理
  • 株式譲渡特有の論点として、株式の評価額・譲渡対価の支払いスキーム(一括か分割か)に加え、表明保証の範囲、既存の雇用契約の引き継ぎ、代表の処遇と役割の継続——これらをフェーズごとにメモを起こし、両社が“同じ前提で”議論できる場を整えました。
  • 医療機関との既存契約が、株式譲渡後も自動承継される点は、買い手にとって大きなメリットでした。一方で、電子カルテベンダーとの連携契約については、一部で相手方への通知義務が発生するケースがあり、法的整理を弁護士と連携して早期に進めました。
基本合意書(LOI)のドラフトと中間金
  • 条件がおおむね固まった段階で、ミライアが基本合意書(LOI)のドラフトを作成。独占交渉権が付与され、中間金のお支払いをしていただきました。

Phase 5. 最終合意・クロージングフェーズ

デューデリジェンス(DD)を経て最終契約書(SPA)を締結。引き渡しが完了するまで、隣にいます。

DDの調整と専門家連携
  • 財務・法務・事業の3軸でDDを実施。株式譲渡では法人格ごと引き受けるため、簿外債務や未払い残業代、医療情報の取り扱いに関するコンプライアンス状況なども確認の対象になります。売り手側の顧問税理士・弁護士と、買い手側の専門家チームの間に入り、論点の優先順位と日程を調整。売り手の業務負荷が集中しないよう、資料提供のスケジュールをこちらで設計しました。
SPAの論点整理
  • DD結果をもとに最終契約書(SPA)の論点を整理。表明保証の補償上限と期間、クローバック条項の有無、アーンアウト(業績連動対価)の設計——株式譲渡ならではの条件項目を、双方にとって公平な落としどころに着地させるため、ミライアが両社の間で翻訳役を担いました。
クロージング立会いと引き渡し
  • 最終契約締結・株式の移転・対価の決済を、ミライアが同席のもと完了。引き渡しが完了するまで隣にいる——これが私たちの変わらないスタンスです。その後、代表は約2ヶ月の移行期間を経て新体制に合流。電子カルテ連携とスタッフィングを一体で提供する新サービス「MediLink for Staff」として、約5ヶ月後に正式提供が始まりました。

結び

医療IT × 医療人材という組み合わせは、一見すると「隣の業界同士」に見えるかもしれません。けれど、両者が共通して向き合っているのは「医療現場の課題」です。電子カルテに蓄積されたデータと、人材紹介を通じて築いた医療機関との関係——それぞれが持つ強みが重なった時に、何が生まれるか。今回のM&Aは、その問いに対する、ひとつの具体的な答えでした。

株式譲渡という形態は、顧客との契約・許認可・雇用をそのまま引き継げる一方、法人格ごと移転するため、デューデリジェンスの深度や表明保証の設計が成否を分けます。ミライアは、そのプロセス全体を、両社が安心して進められるように設計し、実行していきます。

波江田 茂生

株式会社ミライア代表取締役CEO。 スタートアップ企業にて複数の新規事業の立ち上げ、マーケティング、システム構築などを経験。株式会社マイナビにて、大手企業向けの採用コンサルティングおよびメンバーのマネジメントに従事し、最速で課長に昇進、年間MVPを受賞。その後、株式会社マイナビM&Aの立ち上げ責任者として、2年間で個人売上3億円・メンバー30名規模まで事業を拡大。これらの経験を経て、株式会社ミライアを創業し、代表取締役に就任。

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